山根信二先生コラム、一部公開

2021.1.25

FeRCアドバイザーに就任された山根信二先生による【会員限定連載コラム】が始まりました。

第1回、会員以外の方々にも一部だけですがご紹介します。


「世界の研究教育機関から」

山根 信二東京国際工科専門職大学 デジタルエンタテインメント学科教員,NPO法人 IGDA日本 理事・アカデミックSIG幹事)

本連載では,eスポーツシーンを盛り上げてきた欧米各地の研究機関・高等教育機関について紹介していきます。各地の強豪校は,お互い切磋琢磨しながらeスポーツの可能性をさぐるとともに次世代を担う人材を育成しています。

第1回: カリフォルニア大学アーバイン校のeスポーツプログラム(前編)

カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)は,教員からノーベル賞受賞者も輩出された難関大学です.そのUCIが,公立大学として初めてeスポーツ奨学生制度をはじめたときは大きな注目を集めました(国内報道では,毎日新聞「 街角から:ゲームがスポーツ?」(2018)など).このeスポーツ奨学生は大学全体の取り組みの一部であり,その背後では大学内の組織を横断したゲームコミュニティが活動しています.

大学eスポーツを支える組織

この経過を見ると,まず2016年度にUCIコンピュータゲーム科学専攻がゲーム競技者を対象とした教育プログラムの募集を開始します(この専攻は2021年度からはB.S. in Game Design and Interactive Mediaに改編されます)。さらに学外スポンサーを獲得して,世界ランキング上位の学生に対するアスリート特待生制度やキャンパス内のeスポーツ競技場が整備され,他学部の学生でも特待生に応募できるようになりました。この制度を利用して,さっそく高校卒業してから3年間LoLのプロゲーマーだった競技者がeスポーツ奨学生としてUCIを受験して入学を許されています。プロの選手がセカンドキャリアを考えて大学で学びなおすのは多くのスポーツ種目で起こっていますが,eスポーツもその一つになったといえるでしょう。

その後もUCIは2019年5月にESPNチャンネルで4夜連続ドキュメンタリー番組『Good Game: UC Irvine』が放送されYouTubeでも配信されることで,カレッジeスポーツシーンを代表する強豪校として国内外からひろく知られています。

しかし,UCIの取り組みは強化選手に奨学金を出すだけではありません。実は,UCIは2000年代にゲーム研究専攻をつくろうとして失敗したことがあります。UCIは地元にブリザードなどの大手ゲームスタジオやLogitechのようなゲーミングデバイス企業があり,ゲーム開発者コミュニテイで活躍する大学教員もいたため,ゲーム教育拠点をつくろうというのは自然な流れでした。2000年代当時のアメリカではゲームを公立大学で4年間かけて学ぶという構想は疑問視され,Quake大学など悪意のある見出しで報道されるなどの扱いを受け,実現しませんでした。この過去を教訓として,2010年代後半のUCIは,ゲームやeスポーツが学ぶべき価値があるというメッセージを発信しています。

大学eスポーツを支える研究者

eスポーツ特待生に続いて,UCIが着手したのが大物教授の連続スカウトです。2017年にUCIはスタインクーラー教授とスクワイア教授の夫妻を他大学から同時に引き抜き,いきなり大学ニュースのトップ記事に登場,また地元新聞にも登場されるなど,ゲーム研究の第一人者がeスポーツに取り組む大学であるということをアピールします。

・・(続きは会員限定公開)・・


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