【企業がe!】大原学園福岡校「eスポーツ部」が目指す未来

2020.11.3

【企業がe!】学校法人大原学園福岡校  作花浩聡 専門課程教務部次長

 

※この内容は、大原学園福岡校の専門課程教務部次長であり、同校eスポーツ部顧問でもある作花会長が2020年2月のFeRC設立時に受けたインタビューを基に、FeRC事務局が再構成しています。

eスポーツ「教育に活かしたい」

大原学園福岡校は2019年2月1日、クラブ活動として「eスポーツ部」を設立しました。創部は、福岡eスポーツ協会の中島賢一会長との出会いが大きなきっかけでした。

私は当時、大原学園として新しい学科になりうる内容についての調査研究や情報収集を進めており、ふと出席したセミナーで初めて、登壇者として参加していた中島会長に出会いました。その中で初めてeスポーツの話を聞き刺激を受け、セミナー終了直後に中島会長へ声をかけアポイントをとりました。後日、中島会長を訪ねたところ、「これは教育に充分活かすことができる内容だ」と確信しました。当校の校長にその旨報告し、中島会長のサポートもあって大原学園初のeスポーツ部が誕生することになりました。

福岡eスポーツ協会中島賢一会長との出会い

私自身はファミコン世代で、小中学生の頃はゲームに親しんでいましたが、高校では野球部の活動がとても忙しく、ゲームをする時間が自然となくなっていました。

某テレビ局の取材が入る中、在校生へのeスポーツ部設立説明会を経て、1年目は部員18名でスタートしました。大原学園にはさまざまな学生のクラブ活動があり、野球、サッカー、バスケ、卓球、剣道など幅広く行われています。eスポーツ部も一般的ないわゆる「部活動」として、放課後に2時間だけ活動に取り組んでいます。

eスポーツ部室と学生の様子

「監督やコーチはいますか?」とよく聞かれるのですが、顧問は私が務め、専属コーチはいません。eスポーツはデジタルゲームであり、学生の中には上手な人がいたりします。留学生の部員の一人は韓国の世界大会(LoL)出場経験者という学生もいます。学生間で教え合えば、まずは動き始められます。やったことのないゲームタイトルは、経験のある学生が教えてあげることで十分理解できます。部活動はあくまで「学生中心」がモットーですから、学生の中から部長を任命し、グループ討議をしながら進めていったり、ゲームを実際に知る機会もつくったりしています。

観戦者も意識した部室づくり

部室を新設するに当たっては、家で用意できないような環境を作ることを意識しました。ゲーミングPCは個人で購入すると高額で手が出ないという学生もいるかも知れないため、学校の設備としてデスクトップPCとノートPCをそれぞれ準備しました。PCのスペックが違うとゲームにどのような影響が出るのかなどといった体験もできます。また、ゲーミングチェアは全てを同じ物にせず、メーカーや製品の違う商品を複数置いています。イスは座り心地の柔らかさなど、個人によってかなり好き嫌いがありますので、数種類準備することでさまざまなタイプを比較体験できるようにしました。これは、デバイス全般にも言えることで、マウスやコントローラー、ヘッドセット、キーボード、モニターなども数種類用意しました。

ゲーミングチェアはメーカーや種類の違うものを用意
コントローラーも複数種類

観戦用として大画面モニターも完備しています。eスポーツは個人で遊ぶのとは違い、「第三者からプレイを見られる」ことを前提とした競技です。今後、eスポーツを文化として定着させるためには、観客を増やしていくという視点が大事になると考えています。プレイヤーだけが増えていくだけでは文化としての定着は難しく、盛り上がりは一過性で終わってしまいます。

“観客”を意識した大画面モニター

eスポーツ市場の拡大に向けては、中島会長も「見にくる人が増えることが発展のポイントだ」と指摘されています。プロ野球やJリーグでも、選手たちが「魅せる」「魅了する」プレイをすることで、応援している観客は盛り上がりますよね。eスポーツのプロ選手の中には、そういう事をすでに意識して日頃から取り組んでいる方もいます。

部活動といえども、きちんと活動をしたいと考え、大原学園福岡校eスポーツ部ロゴを作りました。当時、活動実績がない状況であるにも関わらず、部室づくりにご支援・ご協力をしてくださった企業さんのロゴも一緒に部室内に掲示させて頂いています。このように、部活動の環境面でも一つ一つに意味を持たせ、日頃から「部活動は学校内だけで完結するものでなく、多数の企業や社会との関わりがあってのことなんだよ」などと、全てが教育につながるように、学生へ伝えています。

ご支援・ご協力企業のロゴも必ず掲示している

世界大会で社会とのつながり構築

EVO Japan 2019 (注:Evolution Championship Series 2019年2月福岡市で開催された格闘ゲーム分野における世界最高峰の大会)が福岡市で開催された時には、当校は出場選手の事前練習会場として教室を無料開放し、主催者と連携して実際に大会で使用される機材を準備しました。日本の参加者だけでなく、海外数カ国からもプロを含む選手が来場され、部室も使っていただきました。

世の中ではグローバル化が叫ばれていますが、日常の学校生活で学生がグローバル化を実感するのはなかなか難しいのが現実です。ですが、EVOエントリー選手への教室開放では実際に海外の選手に会え、ゲームという話題を介して会話が生まれ、コミュニケーションが発生していました。eスポーツ部の部長である学生もその場に立ち会わせていたのですが、そうした体験が確かに教育につながっていると実感しました。

2019年福岡市で開催のEVOジャパン

また、当校の公務員コースの学生延べ260名以上には、EVO Japan 2019の会場運営スタッフとして全面参加してもらいました。当校は職業実践専門課程(注: 企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程。文部科学大臣の認定が必要)が認定されていますが、このように学外と接点を持ち、実践教育のレベルをより引き上げられる好例となりました。

このゲーム大会は福岡市がバックアップに取り組んでいたので、公務員コースがある当校としては、公務員が取り組む仕事の一端を体験する良い機会にもなりました。

簿記、IT、医療・・・ 教育的な波及効果に期待

当校の学科は簿記会計をはじめとして公務員、情報処理、スポーツトレーナー、介護医療保育など、多彩な学科コースがあります。eスポーツは、どの学科にも何らかの波及効果があると考えています。

今後、eスポーツの普及・発展に向け、ある仮説を立てています。競技者が増え、観戦者が増え、プロ選手が増え、プロチームが増える。それをサポートするようなトレーニング機関が増える、ビジネスとして動きが加速していく。端的に言うと、ビジネスとしてお金が動き始めるわけです。例えば、簿記会計分野であれば、いずれeスポーツビジネスが企業の案件として具体化する中で、「eスポーツって何なんだ?」とその時になって知ろうとするよりも、今のうちから知識を持っておけば備えられます。

ゲームはオンライン対戦も盛んですから、ゲーム機本体だけでなく、通信技術、ネット配信、データ分析などの技術の発展が今後も激しくなります。IT技術情報処理の学科の学生がeスポーツに触れる大切さは言うまでもありません。

公務員コースも例外ではありません。日本はeスポーツ発展のための法律が追いついていないと言われています。今後、法律や諸制度を手がけることになる公務員コースの学生にも、今から知っておいてほしいですね。

eスポーツはどの学科にも波及効果がある

さらに、「プレイヤーの姿勢が悪い」「腱鞘炎にかかった」などの事例も増えるでしょう。姿勢改善やマッサージ、栄養管理といったニーズの拡大が見込めるため、スポーツ分野の学科が大いに関係してきます。今後、eスポーツ専門のトレーナーやプロ選手に帯同するトレーナーなどが増えてくるのは必然と言えます。

医療介護分野においてもeスポーツは注目されつつあり、障がい者の競技参加や、高齢者の認知症予防ツールとしての発展が予測されます。各施設でeスポーツのイベントや取り組みが行われる社会になると考えられ、「eスポーツ知っていますよ」という医療介護従事者の方がより貢献できる人材と言えます。

こうして考えると、われわれ大原学園としては「eスポーツをやらない理由がない」と結論付けました。

ゲームの負のイメージ「覆したい」

保護者、特に母親にとっては、ゲームに対して懸念や心配ごとが多々あるのが一般的です。

「ゲームをやらせたくない」「視力が悪くなるのではないか」「ゲーム依存になってしまうのではないか」など、心配はさまざまだと思います。これについては、正しく説明できる人が日本にどれだけいるでしょうか。心配を抱く人たちに、ゲームに対する理解をどれだけ深めることができるかが鍵になると思います。

どんなものでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。例えば、アルコール摂取と健康の問題では、Jカーブというデータがあります。全く飲まないよりも、低量飲酒する人の方が総死亡率は低い傾向にあり、一方、飲酒量を増やしていくと総死亡率は上がっていくというものです。つまり、適量飲む人の方が健康かも知れない、多すぎる量は健康を害する傾向、というものです。

これはゲームも同じではないでしょうか。どのようなものでも、ある一定の限度を超えると良くない事態になると思います。であるにも関わらず、「全て良い」「全て悪い」という0か100かという議論には違和感があります。こうしたものは、さまざまな研究データを基に、教育機関が担っていくべきものではないかと感じています。例えば当校は専門学校として高校との接点がありますが、これからは小中学校などへも積極的に情報発信していくことができるのではないかと考えています。

私の個人的感想ですが、どちらかと言えば一人で家にいて寡黙にゲームするのではなく、オンライン上でもオフライン上でも、みんなで集まってやるeスポーツにより強いメリットを感じています。ネット上では匿名なので暴言を吐く人も多いなどの問題も指摘されますが、これはゲームとは関係なくネットリテラシーの教育を受けていないことが原因だと考えられます。また人々がリアルに集まると相手が目の前にいるので、他者を称える、教え合う・笑顔や笑い声が上がる、といったコミュニケーションの輪が広がります。このようにみんなが集まるコミュニティの場は大切だなぁと実感しています。

小中学生の子どもを持つ保護者からすると、ゲームセンターのイメージは何だか不健康で薄暗いイメージがあり、子どもの安全を心配する声を聞きます。たとえば大原学園の部室に「小中高校生のみなさん、部室に来ていいですよ」と呼びかけて一緒に活動できたら、保護者の心配もまた変わってくるのではないでしょうか。

eスポーツは公平で、あらゆる壁を払拭してくれるという特徴があると感じています。例えば、小学生が年齢も体格もはるか上の大学生や専門学校生、もっと言うと大人に勝つこともありえます。性別障害の有無も関係ありません。当校のeスポーツ部には留学生も5名所属していますが、言葉の壁もゲームはなくしてくれると実感しています。勝敗や力量によらず、ゲームを通してのコミュニケーションは誰もがフラットな関係になれるという効果があるのです。

企業や教育機関を巻き込み普及目指す

当校eスポーツ部は、設立時の目標として「日本、福岡でのeスポーツ普及」を掲げました。広く普及させるためには自分たちもまず試合に参加する必要があると思い、2019年いばらき国体の文化プログラムにてeスポーツの大会がありましたので、そこを目指して予選にエントリーしました。このいばらき国体の福岡県予選では選手として参加するだけではなく大会運営スタッフとしてもeスポーツ部学生は参加しました。今後も積極的に学生には活動させたいと考えています。

部活動といってもただゲームをやっているだけでしょ?」と言われることも多いのですが、学生たちは大会の運営スタッフとして参加したり、障害者の子供向けの仕事体験イベントにeスポーツブースを設けたりするなど、健全にゲームに関わっていると言えます。この障害者向けイベントの終了後に参加者の母親より下記メッセージが送られてきました。「今日は、お世話になりました。子供は大満足で、帰ってからもずっと『楽しかった~』と言ってます。前日からの準備とお聞きしました。連休返上で、有難いです。生徒さんという立場にも関わらず本当に楽しく、分かりやすく指導下さり有り難う御座いました。(原文ママ)」とお礼を頂いたのでeスポーツ部員に伝えた所、準備や当日運営の疲れは一気に吹き飛んでいました。自分たちの好きなゲームを通して誰かのために何かを行い、感謝され、やってよかったと感じられる。この様な体験はまさに実践教育の一部だと思いませんか?

部活動としてのeスポーツ部

部室内で日々の学生たちの活動を見ていると、「頭をとても使っているなあ」と実感しています。何事もそうですが、真剣にやると凄く疲れるんです。ゲームで疲れたから息抜きに別のゲームをやったりすることもありますね(笑) 知らない人からすれば、ずっとゲームをやっていると思われますが、気分転換することで頭をリフレッシュさせているようで、どうも頭の使い方がその都度違う感じがしています。日々の活動は2時間なので時間を無駄にしないように取り組んでいるのかもしれません。

「eスポーツの普及を目指してどうなるのか」「普及すればどうなるのか」などの疑問ついて話す機会がありますが、eスポーツの普及は、最終的に関連する企業や仕事が増え、会社の中に専門部署ができたりすることなどによって、雇用につながると期待しています。雇用の創出は日本社会への貢献です。そういう機会を教育機関として増やしたいと願っているのです。

ある企業から今後eスポーツに参入したいのでeスポーツを理解しているeスポーツ部員を採用したいと連絡を受けたこともあります。

小学校から専門学校・大学まで、学校はたくさんあります。学校それぞれにさまざまな考え方があり、「eスポーツはまだよく分からないから学校としてやらない」と思っている学校も多いのではないでしょうか。ネガティブなイメージがあったり、興味を持っている人がいたり、いろいろだと思います。一度、学校の教育関係者が一堂に集まって、eスポーツを体験して交流する機会があるとイメージがガラリと変わることもあると思います。

また、企業の中には学校よりも早く、eスポーツに興味や期待を持っている例が少なくありません。当校の部室に機材やソリューションを提供してくれる企業もとても増えています。企業だけでなく、教育界でもそのような動きがどんどん出てくると理想的だと願っています。

何事にも当てはまると思いますが、使い方次第で良くもなれば悪くもなる。正しい使い方を誰かが示すことが大事であり、正しい使い方を理解しようとすることが大事です。

ゲームというジャンルであるeスポーツもまさにこれに当てはまると考えていますので、正しい取組方法を示すことが出来るようにこれからも取り組んでいきたいと考えています。


【作花 浩聡】(Sakuka Hiroaki) 所属:学校法人大原学園 福岡校

高校卒業後、大原学園小倉校に進学。その後福岡校の教務職員として就職。簿記検定受験クラス、民間就職の指導を担当後、総務職に異動。受付・学生管理・経理の責任者を経験後、再度教務担当部署へ異動。現在は専門課程教務部次長でありeスポーツ部顧問。福岡地域戦略推進協議会(FDC)eスポーツビジネス創出分科会にて2019年2020年の会長就任。

主なメディア出演として、ジェイコム九州(福岡人図鑑第74回)・FM福岡(Have Fun!!e-sports)・RKB毎日放送(エンタテ!区)・FBS福岡放送(めんたいワイド)・テレQ(ベストでeスポ!)・西日本新聞(もっと九州・ファンファン福岡)など。

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【研究者インタビュー】西薗教授に聞く③

2020.8.10

【研究者の眼】西薗秀嗣教授インタビュー③

参画研究者の知見をご紹介する企画「研究者の眼」

西薗秀嗣教授(九州産業大学人間科学部スポーツ健康科学科)インタビュー最終回!生理学・バイオメカニクス・トレーニング科学・臨床心理学…幅広い研究領域で活躍されて来た西薗教授に、活き活きとeスポーツ研究へのお考えをお話し頂きました。

eスポーツを愛する人々に,ぜひ知って欲しい知的好奇心満載のインタビュー3部作ー③、最終回です。文責:FeRC事務局


(前回の続きから…)

脳の働き、判断メカニズムを調べたい

西薗:eスポーツ研究では、脳の働き、判断メカニズムの研究に取り組みたいですね。我々は、eスポーツで心身ともに元気になるように、“eスポーツを科学する”事が目標です。eスポーツの優秀な選手の能力、どこが凄いのかまず調べたい。その後のトレーニングに繋がるわけですから。

eスポーツ選手の能力を生理学的にいうと、冒頭でも述べた「入力系」(視覚聴覚などから情報を得る)⇒「情報処理系」(脳など中枢神経)⇒「出力系」(正確な操作等)という仕組みになるわけですが、特にこの“脳”は本当に面白い。同時に、脳も含めて、人間のことは全然わかっていなかった。

脳というのはね、「準備」しているんです。人間の運動はずっと前から予測し準備されている。いまだに発生していない事が脳内にはあるんですよ(笑)

事務局:発生していない事が脳に??(混乱)

ここにブレインブックという養老孟司先生監訳の本がありますので引用します。

例えばテニスの試合、相手コートからサーブを打ち込まれます。レシーブ側選手は打ち込まれたボールが実際に見えるのはネットのこちら側に着地した時で、これでは打ち返すのに間に合わない。入力情報が意識にのぼるまで0.5秒さらに身体を動かすのに0.5秒、つまり1秒かかってしまうと、飛んできたボールなんか打ち返せないわけです。ところがレシーブ側選手の脳は、相手がネットの向こう側で動作している時に着地点を予測し、レシーブ動作を脳内で準備する「運動計画」無意識に立案します。これによってボールが見えてから意識的な操作(レシーブ動作)をしても間に合う。これが脳の準備、まだ発生していない事が脳内にある、というわけです。

写真)南江堂「ブレインブック-みえる脳」養老孟司監訳

このあたりのことをeスポーツで研究したいんですよね。脳の集中、予測、決定、脳から命令が下りてきて動く。eスポーツのジャンル別にやってみたい。これで、いかに反応動作を早くするか。いろんな事が見えてくると思いますね。

脳の錯覚・パラドックス

西薗:人間のことはね、全然わかっていなかった。最近でいえば、とある研究があって、サッカーのオフサイドのときの線審。あれは線審の錯覚が関与する事も多い、という事がわかったんです。選手が走りこんで行って後方からボールが蹴り出される。ボールを見ている線審は「選手がそのまま走り続けている」と錯覚しているケースがある、というわけです。見ていない。よく選手が「自分はオフサイドラインを出ていない!」と抗議する場面があるでしょう?あれ、頻度はともかく結果的に選手が正しい事もあったわけですね(笑)それで、現在はビデオ判定などで慎重にジャッジされるようになっているわけです。

西薗教授のお話は人間の可能性の豊かさを感じる

ちょっとまとめますとね。eスポーツでやりたい研究としては、第一に脳の判断メカニズム。第二に判断メカニズム(思い込み、錯覚)を利用した戦術戦略。第三にこうした成果を教育トレーニングに活かそう、という事を考えています。福岡デザイン&テクノロジー専門学校の伊藤先生(編集注:FeRC会員伊藤僚洋氏)などとぜひ研究したいですね!

ちなみに伊藤先生は以前お会いした際に「一流のeスポーツ選手で姿勢の悪い人は一人もいない」とおっしゃっていました。そういうところもしっかり見ていきたいと思います。

事務局:脳のお話し、たいへんに刺激的で面白いです!

西薗:脳は、全てを使わないといけません。あらゆる脳の箇所。視覚・聴覚。前頭前野・創造的なところ。一概に言えないかもしれないけど、芸術家は長生きする。脳のすべてを使っているからだと思いますね。私自身、二科会員の有川基雄先生(注:2018年逝去。二科会会員)に絵を習って月2回、10年ほど通って描いてました。いろいろな事を感じ、イメージしながら書くので「脳をすごく使っている」と実感しましたね。

写真)研究室に飾られている有川基雄先生の絵画「競う」

文化は”遊び”から生まれる

事務局:「勉強だけ」「〇〇だけ」は必ずしも良くはないのですね。

西薗:勉強して・読んで・理解して・試験を…脳のごく一部の、これだけでは人間、良くありませんね。だいたい人間は楽しい事はやりますからね。ロジェ・カイヨワという人の「遊びと人間」という本があるのですが、人間の文化は遊びから生まれる、と言っています。遊びの中から文化が生まれてきたのです。いろんな遊びがある、そのなかの“ゲーム”というのは競争なんですね。競争からゲームが生まれ、スポーツが生まれた。 ※編集注:カイヨワは著書で遊びを競争・運・模擬・眩暈のどれかの性質があると提示した

写真)ロジェ・カイヨワ著「遊びと人間」1961年

スポーツは全身運動で、eスポーツは部分運動(指だけとか限定的)という違いはあるのですが。ともかくね、人間そもそも遊びから、研究も社会生活もどんどん発展してきたと考えています。そう根本的に、楽しいという感覚。楽しい!好き!であることから発展して来たのだと。ゲーム・スポーツ、その中にeスポーツも入っていく。そう思っています。

事務局:西薗教授、お忙しいなか、ありがとうございました!

西薗教授インタビュー3部作、いかがでしたでしょうか。eスポーツ研究に取り組まれるなかに、人間の可能性の豊かさを感じる素晴らしいお話をうかがうことが出来ました。活き活きと語られる教授のお人柄にもあらためて感銘する時間でした。文責:FeRC事務局


【西薗秀嗣】にしぞのひでつぐ 九州産業大学人間科学部スポーツ健康科学科 教授

1950年(昭和25年)大阪生まれ,1964年東京オリンピックをみて現在の道へ。1979年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了,教育学博士。北海道大学教育学部講師,鹿屋体育大学助教授,カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)生理学部客員教授。鹿屋体育大学ではスポーツトレーニング教育研究センター教授,スポーツ生命科学系教授など歴任,2016年名誉教授。同大退官後,九州産業大学にて現職。九州大学体育連合理事長(2019年~)「体育・スポーツ教育研究」編集委員長 (2019年~)鹿児島県スクールカウンセラー(2004年~2015年)「超人たちのパラリンピック」企画/監修/出演(NHK BS1 2017.10.28放映)趣味は絵画(油絵,アクリル画)フォークソング,古代史,読書,サッカー、ウイニングイレブンなど多彩。

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