日本デジタルゲーム学会にて基調講演決定!

2021.9.7

《日本デジタルゲーム学会 2021夏季研究発表大会》開催

 
日時:2021年9月12日(日)
場所:福岡大学(七隈キャンパス)
※ハイフレックス型(対面、オンライン共に同様の内容で実施すること)での開催予定です。
参加費:
会 員:一般・発表者※ 3000円、一般・参加のみ 2000円、学生1000円
非会員:一般・発表者※ 4000円、一般・参加のみ 3000円、学生1000円
※「発表者」料金は第一発表者にのみ適用になります。学生は第一発表者も学生料金を適用します。
※ 参加費を口座振込で払う場合は2021年9月6日までにお支払いください。クレジット決済の場合も9月10日までにお支払いをお願いいたします。

FeRC基調講演決定!

この日本デジタルゲーム学会2021下記研究発表大会の「基調講演2」にて

FeRCの磯貝浩久理事長/作花浩聡会長/森田泰暢CDOが登壇します

公開講演会(オンライン)
開催日時:9月12日(日)17-18時
応募締め切りは、9月10日(金)23時45分です。
お時間のある方は、ご参加ください!!

-論題–
eスポーツを科学する-福岡eスポーツリサーチコンソーシアムの取り組み-
–登壇者–
磯貝浩久教授

(九州産業大学人間科学部教授/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)理事長)
作花浩聡 会長

(福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC))
森田泰暢 先生

(福岡大学商学部准教授/福岡大学クリエイティブ・マネジメント・プログラム運営委員/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)コミュニティデザインオフィサー)

–日時–
2021年9月12日(日)17-18時
–応募締め切り–
2021年9月10日(金)23時45分

–ミーティング情報–
ミーティング情報はフォームに回答いただいたメールアドレスにお送りいたします。
申込詳細はこちらから
https://digrajapan.org/?p=8672

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ePARAにて作花会長インタビュー記事公開

2021.5.26

ePARA(バリアフリーeスポーツに関するサイト)にて、FeRC作花会長が紹介されました

ePARA代表・加藤大貴さんが、eスポーツやゲームに関わる様々な方にインタビューする不定期企画。今回、福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)作花浩聡会長のインタビューを掲載いただきました。宜しければご一読ください。

インタビュー記事はこちらhttps://epara.jp/interview-ferc-210522/

設立の発起人となった磯貝浩久教授(FeRC理事長)作花浩聡会長

~インタビュー記事より~

”FeRCの目的としては、リサーチの対象を絞ってはいません。現在プロプレイヤーの方も、これからプロを目指す学生さんも、eスポーツに興味を持つ小中高生も、eスポーツに全く興味がない保護者の方や高齢者の方もリサーチ対象になります。それぞれに対して必要となるものは違いますが、eスポーツに関わることでどう影響が出るかっていうのが、まだ誰もデータとして出せていない。”

”eスポーツは障害がある方であろうが、健常者であろうが大差なく、ルールさえ理解していれば同じフィールドで競技を行うことができます。区別することは必須ではありません。地域の違いや男女の力の差、年齢も関係ありません。壁を作る必要がないのです。このようなスポーツは存在しません。ですから、逆にeスポーツのリサーチ対象を絞ってしまうとeスポーツの良い部分が見えなくなってしまう”

■バリアフリーeスポーツに関するニュースサイト「ePARA」

加藤大貴代表、ありがとうございました!


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FM福岡 【Have Fan!!e-sports】最終回!作花会長&磯貝理事長W出演

2021.3.26

FM福岡 【Have Fan!!e-sports】3月25日最終回!作花会長&磯貝理事長W出演しました

右から)パーソナリティ西川さとりさん、作花浩聡会長、磯貝浩久理事長

FM福岡 【Have Fan!!e-sports】最終回

福岡のeスポーツに取り組む様々な関係者が出演する同番組、残念ながら今回をもって最終回、いったん終了だそうです。FeRCからも多数出演させていただき、“eスポーツを科学する”という取り組みにたいへん共感して下さった同番組と西川さとりさんに感謝いたします。

同番組3月25日分のブログはこちら

ラジオでのトーク概要についてご紹介します!

この1年間の研究の紹介

①eスポーツプレイヤーのパフォーマンスと関連する認知要因の実験的検討(2020年)

FeRCの第一弾研究となったこのリサーチは、eスポーツにおいて「どう判断しているか」「どこを見ているか」といった認知要因について研究したもの。特に複数のものを同時に見る能力=複数対象追跡のスキルが上がると、グランツーリスモのタイムが短縮されたという結果が得られました。このようなトレーニングを行う事でタイムをもっと短く出来るのではないかという可能性が示された研究です。なお、この研究での複数対象追跡トレーニングはカナダモントリオール大学で開発され世界中で研究対象となっているニューロトラッカーが用いられました。

複数対象追跡(MOT)スキルトレーニングとして活用されるニューロトラッカー
研究では博多を拠点とするニワカゲームス選手が協力

ニューロトラッカーは特にeスポーツのみならず、一般の運転スキルの向上、リアルスポーツアスリートによる競技スキル向上、学習時における集中力持続時間向上などが期待され、幅広い分野で活用されています。

②競技レベルの違いによるeスポーツプレー中の視覚探索方略及び感情状態の比較(2020年)

感情状態はeスポーツプレー中の脳波を測定し、熟練者と非熟練者を比較しました。熟練者はプレー中もリラックスした状態をキープし、途中不安になったりせず安定した脳波の状態でプレーが出来ている事が明らかになりました。非熟練者は場面によって興奮したりするなど感情の起伏がみられました。eスポーツ熟練の為には、感情の起伏を抑えコントロールするトレーニングが重要ではないかと示唆されました。

研究にあたる古門良亮先生(西日本工業大学)
FPS熟練プレーヤーは画面のどこを見ているか

視覚探索方略は、プレー中いつどこをどれくらい見ているか、という測定を行いました。熟練者と非熟練者で大きな違いがあり、熟練者は味方の動きをよく見る事が多いという事が数値として明確に確認できました。チームプレー、チームワークが重要なゲームにおいてこれはたいへん面白い結果でした。

③ゲーミンググラスがeスポーツ使用時の自律神経に及ぶ影響(2021年) 詳細はこちらを参照

eスポーツによって身体的精神的疲労が考えられますが、それらに対してゲーミンググラスがどのような影響を及ぼすのか調査しました。結果、ゲーミンググラス(ニデック社G-SQUARE)を使用すると疲れにくくなることが自律神経のデータから明らかになりました。

G-SQUAREとニデック社インタビュー記事はこちら  

TEHC.C福岡でのプレーヤー自律神経測定
G-SQUAREウェブサイトにて公開

④eスポーツ実施を通した地域高齢者の認知症予防(2021年) 一般公開資料はこちらを参照

福岡県豊前市との協定に基づき行いました。eスポーツ(グランツーリスモ・ぷよぷよ)をおこなった群とおこなわなかった群にわけ様々な指標で評価しました。まず一つ、高齢者の生きがい・幸福感が変わるのか調べたところ、明確ではないがeスポーツをおこなった群は実施後の方が「昔の自分を取り戻した」傾向が見られました。認知機能そのものはトレイルメイキングテストとワンバックタスクによって脳の情報処理能力について調べました。これもeスポーツ実施による改善傾向が見られました。身体能力においては開眼片足立ちと握力について調べたところやはり向上の傾向が見られました。※豊前市報告会の模様はこちら

豊前市では後藤市長も参加の対戦会開催も
開眼片足立ち測定。eスポーツによる身体能力の変化も調査

対象人数がそれほど多くなかったので明確な差として出せるまではいきませんでしたが、このように良い影響の可能性として示されたことが大きかったです。今後は対象者を増やしながら継続的に研究していきたいと思っています。豊前市後藤市長はたいへん積極的にeスポーツにも期待を寄せられ、後藤市長との対戦会は大いに盛り上がり、高齢者に対するeスポーツの可能性の大きさ・楽しさを感じました。

今後の展望について

作花会長:豊前市研究を評価頂いた会員企業リーフラス株式会社さんが、大分県中津市の温泉宿泊施設コアやまくに内にeスポーツ機材を揃え、地域で愛されるeスポーツ施設山国eeeスポーツフィールドをオープンさせました。(オープニングイベントの模様はこちら)このように各地域で気軽に皆で楽しめるeスポーツの動きに繋げて行けたらと考えています。また普及に伴い増えるeスポーツプレーヤーに対するアンケートリサーチも進めて行く予定です。

磯貝理事長:研究方面の展望として、FeRCの研究者や企業の共同執筆で「eスポーツの科学的な視点」で執筆した本を出版予定です。(現在年内出版に向け執筆中)またこれまで自然科学的な研究が多かったのですが、今後はこれに加え社会科学、例えば町おこしのコミュニティ的な研究でまとめてみるなど、幅広い参画研究者のお力でやって行きたいと考えています。


FM福岡 【Have Fan!!e-sports】は将来eスポーツで活躍する未来人の育成を目指して、関わる人々が毎週様々に出演してきました。
(これまでの主な出演者)
中島賢一さん(福岡eスポーツ協会会長)☆古賀聡さん(ニワカソフト株式会社代表取締役)☆作花浩聡会長(大原学園福岡校eスポーツ部顧問)☆磯貝浩久理事長(九州産業大学)☆西薗秀嗣教授(九州産業大学)☆谷川剛士先生(TECH.C福岡)☆伊藤僚洋先生(FPSゲーミングコーチ)☆大原学園eスポーツ部の皆さん☆神崎保孝先生(臨床心理士)☆ニワカゲームス古川選手/荒木選手/龍選手/小田英天取締役/eスポーツ事業部太田寛さん☆鈴木達朗事務局長(FeRC)☆古門良亮先生(西日本工業大学)☆夏目季代久教授(九州工業大学)☆平良美津子先生(福岡市立こども病院眼科視能訓練士)☆井上一馬さん(リーフラス株式会社専務執行役員)☆TECH.C福岡福田歩先生塩川実都先生その他多数
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【企業がe!】大原学園福岡校「eスポーツ部」が目指す未来

2020.11.3

【企業がe!】学校法人大原学園福岡校  作花浩聡 専門課程教務部次長

 

※この内容は、大原学園福岡校の専門課程教務部次長であり、同校eスポーツ部顧問でもある作花会長が2020年2月のFeRC設立時に受けたインタビューを基に、FeRC事務局が再構成しています。

eスポーツ「教育に活かしたい」

大原学園福岡校は2019年2月1日、クラブ活動として「eスポーツ部」を設立しました。創部は、福岡eスポーツ協会中島賢一会長との出会いが大きなきっかけでした。

私は当時、大原学園として新しい学科になりうる内容についての調査研究や情報収集を進めており、ふと出席したセミナーで初めて、登壇者として参加していた中島会長に出会いました。その中で初めてeスポーツの話を聞き刺激を受け、セミナー終了直後に中島会長へ声をかけアポイントをとりました。後日、中島会長を訪ねたところ、「これは教育に充分活かすことができる内容だ」と確信しました。当校の校長にその旨報告し、中島会長のサポートもあって大原学園初のeスポーツ部が誕生することになりました。

福岡eスポーツ協会中島賢一会長との出会い

私自身はファミコン世代で、小中学生の頃はゲームに親しんでいましたが、高校では野球部の活動がとても忙しく、ゲームをする時間が自然となくなっていました。

某テレビ局の取材が入る中、在校生へのeスポーツ部設立説明会を経て、1年目は部員18名でスタートしました。大原学園にはさまざまな学生のクラブ活動があり、野球、サッカー、バスケ、卓球、剣道など幅広く行われています。eスポーツ部も一般的ないわゆる「部活動」として、放課後に2時間だけ活動に取り組んでいます。

eスポーツ部室と学生の様子

「監督やコーチはいますか?」とよく聞かれるのですが、顧問は私が務め、専属コーチはいません。eスポーツはデジタルゲームであり、学生の中には上手な人がいたりします。留学生の部員の一人は韓国の世界大会(LoL)出場経験者という学生もいます。学生間で教え合えば、まずは動き始められます。やったことのないゲームタイトルは、経験のある学生が教えてあげることで十分理解できます。部活動はあくまで「学生中心」がモットーですから、学生の中から部長を任命し、グループ討議をしながら進めていったり、ゲームを実際に知る機会もつくったりしています。

観戦者も意識した部室づくり

部室を新設するに当たっては、家で用意できないような環境を作ることを意識しました。ゲーミングPCは個人で購入すると高額で手が出ないという学生もいるかも知れないため、学校の設備としてデスクトップPCとノートPCをそれぞれ準備しました。PCのスペックが違うとゲームにどのような影響が出るのかなどといった体験もできます。また、ゲーミングチェアは全てを同じ物にせず、メーカーや製品の違う商品を複数置いています。イスは座り心地の柔らかさなど、個人によってかなり好き嫌いがありますので、数種類準備することでさまざまなタイプを比較体験できるようにしました。これは、デバイス全般にも言えることで、マウスやコントローラー、ヘッドセット、キーボード、モニターなども数種類用意しました。

ゲーミングチェアはメーカーや種類の違うものを用意
コントローラーも複数種類

観戦用として大画面モニターも完備しています。eスポーツは個人で遊ぶのとは違い、「第三者からプレイを見られる」ことを前提とした競技です。今後、eスポーツを文化として定着させるためには、観客を増やしていくという視点が大事になると考えています。プレイヤーだけが増えていくだけでは文化としての定着は難しく、盛り上がりは一過性で終わってしまいます。

“観客”を意識した大画面モニター

eスポーツ市場の拡大に向けては、中島会長も「見にくる人が増えることが発展のポイントだ」と指摘されています。プロ野球やJリーグでも、選手たちが「魅せる」「魅了する」プレイをすることで、応援している観客は盛り上がりますよね。eスポーツのプロ選手の中には、そういう事をすでに意識して日頃から取り組んでいる方もいます。

部活動といえども、きちんと活動をしたいと考え、大原学園福岡校eスポーツ部ロゴを作りました。当時、活動実績がない状況であるにも関わらず、部室づくりにご支援・ご協力をしてくださった企業さんのロゴも一緒に部室内に掲示させて頂いています。このように、部活動の環境面でも一つ一つに意味を持たせ、日頃から「部活動は学校内だけで完結するものでなく、多数の企業や社会との関わりがあってのことなんだよ」などと、全てが教育につながるように、学生へ伝えています。

ご支援・ご協力企業のロゴも必ず掲示している

世界大会で社会とのつながり構築

EVO Japan 2019 (注:Evolution Championship Series 2019年2月福岡市で開催された格闘ゲーム分野における世界最高峰の大会)が福岡市で開催された時には、当校は出場選手の事前練習会場として教室を無料開放し、主催者と連携して実際に大会で使用される機材を準備しました。日本の参加者だけでなく、海外数カ国からもプロを含む選手が来場され、部室も使っていただきました。

世の中ではグローバル化が叫ばれていますが、日常の学校生活で学生がグローバル化を実感するのはなかなか難しいのが現実です。ですが、EVOエントリー選手への教室開放では実際に海外の選手に会え、ゲームという話題を介して会話が生まれ、コミュニケーションが発生していました。eスポーツ部の部長である学生もその場に立ち会わせていたのですが、そうした体験が確かに教育につながっていると実感しました。

2019年福岡市で開催のEVOジャパン

また、当校の公務員コースの学生延べ260名以上には、EVO Japan 2019の会場運営スタッフとして全面参加してもらいました。当校は職業実践専門課程(注: 企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程。文部科学大臣の認定が必要)が認定されていますが、このように学外と接点を持ち、実践教育のレベルをより引き上げられる好例となりました。

このゲーム大会は福岡市がバックアップに取り組んでいたので、公務員コースがある当校としては、公務員が取り組む仕事の一端を体験する良い機会にもなりました。

簿記、IT、医療・・・ 教育的な波及効果に期待

当校の学科は簿記会計をはじめとして公務員、情報処理、スポーツトレーナー、介護医療保育など、多彩な学科コースがあります。eスポーツは、どの学科にも何らかの波及効果があると考えています。

今後、eスポーツの普及・発展に向け、ある仮説を立てています。競技者が増え、観戦者が増え、プロ選手が増え、プロチームが増える。それをサポートするようなトレーニング機関が増える、ビジネスとして動きが加速していく。端的に言うと、ビジネスとしてお金が動き始めるわけです。例えば、簿記会計分野であれば、いずれeスポーツビジネスが企業の案件として具体化する中で、「eスポーツって何なんだ?」とその時になって知ろうとするよりも、今のうちから知識を持っておけば備えられます。

ゲームはオンライン対戦も盛んですから、ゲーム機本体だけでなく、通信技術、ネット配信、データ分析などの技術の発展が今後も激しくなります。IT技術情報処理の学科の学生がeスポーツに触れる大切さは言うまでもありません。

公務員コースも例外ではありません。日本はeスポーツ発展のための法律が追いついていないと言われています。今後、法律や諸制度を手がけることになる公務員コースの学生にも、今から知っておいてほしいですね。

eスポーツはどの学科にも波及効果がある

さらに、「プレイヤーの姿勢が悪い」「腱鞘炎にかかった」などの事例も増えるでしょう。姿勢改善やマッサージ、栄養管理といったニーズの拡大が見込めるため、スポーツ分野の学科が大いに関係してきます。今後、eスポーツ専門のトレーナーやプロ選手に帯同するトレーナーなどが増えてくるのは必然と言えます。

医療介護分野においてもeスポーツは注目されつつあり、障がい者の競技参加や、高齢者の認知症予防ツールとしての発展が予測されます。各施設でeスポーツのイベントや取り組みが行われる社会になると考えられ、「eスポーツ知っていますよ」という医療介護従事者の方がより貢献できる人材と言えます。

こうして考えると、われわれ大原学園としては「eスポーツをやらない理由がない」と結論付けました。

ゲームの負のイメージ「覆したい」

保護者、特に母親にとっては、ゲームに対して懸念や心配ごとが多々あるのが一般的です。

「ゲームをやらせたくない」「視力が悪くなるのではないか」「ゲーム依存になってしまうのではないか」など、心配はさまざまだと思います。これについては、正しく説明できる人が日本にどれだけいるでしょうか。心配を抱く人たちに、ゲームに対する理解をどれだけ深めることができるかが鍵になると思います。

どんなものでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。例えば、アルコール摂取と健康の問題では、Jカーブというデータがあります。全く飲まないよりも、低量飲酒する人の方が総死亡率は低い傾向にあり、一方、飲酒量を増やしていくと総死亡率は上がっていくというものです。つまり、適量飲む人の方が健康かも知れない、多すぎる量は健康を害する傾向、というものです。

これはゲームも同じではないでしょうか。どのようなものでも、ある一定の限度を超えると良くない事態になると思います。であるにも関わらず、「全て良い」「全て悪い」という0か100かという議論には違和感があります。こうしたものは、さまざまな研究データを基に、教育機関が担っていくべきものではないかと感じています。例えば当校は専門学校として高校との接点がありますが、これからは小中学校などへも積極的に情報発信していくことができるのではないかと考えています。

私の個人的感想ですが、どちらかと言えば一人で家にいて寡黙にゲームするのではなく、オンライン上でもオフライン上でも、みんなで集まってやるeスポーツにより強いメリットを感じています。ネット上では匿名なので暴言を吐く人も多いなどの問題も指摘されますが、これはゲームとは関係なくネットリテラシーの教育を受けていないことが原因だと考えられます。また人々がリアルに集まると相手が目の前にいるので、他者を称える、教え合う・笑顔や笑い声が上がる、といったコミュニケーションの輪が広がります。このようにみんなが集まるコミュニティの場は大切だなぁと実感しています。

小中学生の子どもを持つ保護者からすると、ゲームセンターのイメージは何だか不健康で薄暗いイメージがあり、子どもの安全を心配する声を聞きます。たとえば大原学園の部室に「小中高校生のみなさん、部室に来ていいですよ」と呼びかけて一緒に活動できたら、保護者の心配もまた変わってくるのではないでしょうか。

eスポーツは公平で、あらゆる壁を払拭してくれるという特徴があると感じています。例えば、小学生が年齢も体格もはるか上の大学生や専門学校生、もっと言うと大人に勝つこともありえます。性別障害の有無も関係ありません。当校のeスポーツ部には留学生も5名所属していますが、言葉の壁もゲームはなくしてくれると実感しています。勝敗や力量によらず、ゲームを通してのコミュニケーションは誰もがフラットな関係になれるという効果があるのです。

企業や教育機関を巻き込み普及目指す

当校eスポーツ部は、設立時の目標として「日本、福岡でのeスポーツ普及」を掲げました。広く普及させるためには自分たちもまず試合に参加する必要があると思い、2019年いばらき国体の文化プログラムにてeスポーツの大会がありましたので、そこを目指して予選にエントリーしました。このいばらき国体の福岡県予選では選手として参加するだけではなく大会運営スタッフとしてもeスポーツ部学生は参加しました。今後も積極的に学生には活動させたいと考えています。

部活動といってもただゲームをやっているだけでしょ?」と言われることも多いのですが、学生たちは大会の運営スタッフとして参加したり、障害者の子供向けの仕事体験イベントにeスポーツブースを設けたりするなど、健全にゲームに関わっていると言えます。この障害者向けイベントの終了後に参加者の母親より下記メッセージが送られてきました。「今日は、お世話になりました。子供は大満足で、帰ってからもずっと『楽しかった~』と言ってます。前日からの準備とお聞きしました。連休返上で、有難いです。生徒さんという立場にも関わらず本当に楽しく、分かりやすく指導下さり有り難う御座いました。(原文ママ)」とお礼を頂いたのでeスポーツ部員に伝えた所、準備や当日運営の疲れは一気に吹き飛んでいました。自分たちの好きなゲームを通して誰かのために何かを行い、感謝され、やってよかったと感じられる。この様な体験はまさに実践教育の一部だと思いませんか?

部活動としてのeスポーツ部

部室内で日々の学生たちの活動を見ていると、「頭をとても使っているなあ」と実感しています。何事もそうですが、真剣にやると凄く疲れるんです。ゲームで疲れたから息抜きに別のゲームをやったりすることもありますね(笑) 知らない人からすれば、ずっとゲームをやっていると思われますが、気分転換することで頭をリフレッシュさせているようで、どうも頭の使い方がその都度違う感じがしています。日々の活動は2時間なので時間を無駄にしないように取り組んでいるのかもしれません。

「eスポーツの普及を目指してどうなるのか」「普及すればどうなるのか」などの疑問ついて話す機会がありますが、eスポーツの普及は、最終的に関連する企業や仕事が増え、会社の中に専門部署ができたりすることなどによって、雇用につながると期待しています。雇用の創出は日本社会への貢献です。そういう機会を教育機関として増やしたいと願っているのです。

ある企業から今後eスポーツに参入したいのでeスポーツを理解しているeスポーツ部員を採用したいと連絡を受けたこともあります。

小学校から専門学校・大学まで、学校はたくさんあります。学校それぞれにさまざまな考え方があり、「eスポーツはまだよく分からないから学校としてやらない」と思っている学校も多いのではないでしょうか。ネガティブなイメージがあったり、興味を持っている人がいたり、いろいろだと思います。一度、学校の教育関係者が一堂に集まって、eスポーツを体験して交流する機会があるとイメージがガラリと変わることもあると思います。

また、企業の中には学校よりも早く、eスポーツに興味や期待を持っている例が少なくありません。当校の部室に機材やソリューションを提供してくれる企業もとても増えています。企業だけでなく、教育界でもそのような動きがどんどん出てくると理想的だと願っています。

何事にも当てはまると思いますが、使い方次第で良くもなれば悪くもなる。正しい使い方を誰かが示すことが大事であり、正しい使い方を理解しようとすることが大事です。

ゲームというジャンルであるeスポーツもまさにこれに当てはまると考えていますので、正しい取組方法を示すことが出来るようにこれからも取り組んでいきたいと考えています。


【作花 浩聡】(Sakuka Hiroaki) 所属:学校法人大原学園 福岡校

高校卒業後、大原学園小倉校に進学。その後福岡校の教務職員として就職。簿記検定受験クラス、民間就職の指導を担当後、総務職に異動。受付・学生管理・経理の責任者を経験後、再度教務担当部署へ異動。現在は専門課程教務部次長でありeスポーツ部顧問。福岡地域戦略推進協議会(FDC)eスポーツビジネス創出分科会にて2019年2020年の会長就任。

主なメディア出演として、ジェイコム九州(福岡人図鑑第74回)・FM福岡(Have Fun!!e-sports)・RKB毎日放送(エンタテ!区)・FBS福岡放送(めんたいワイド)・テレQ(ベストでeスポ!)・西日本新聞(もっと九州・ファンファン福岡)など。

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豊前市と【eスポーツいきがい研究事業に関する協定】を締結

2020.10.1

「豊前市 FeRC eスポーツいきがい研究事業に関する協定書」締結について

右から夏目季代久教授、作花浩聡FeRC会長、後藤元秀市長、林田冷子市民福祉部長(豊前市)

プレスリリースはこちら 豊前市協定書調印プレスリリース10月1日(pdf)

協定書調印式

“eスポーツを科学する”産学連携共同研究事業体「福岡eスポーツリサーチコンソーシアム」(通称FeRC/福岡市/会長作花浩聡)は2020年9月28日豊前市(福岡県)との間に【eスポーツいきがい研究事業に関する協定書】を締結、豊前市役所内にて同日調印式を行いました。

 この協定はeスポーツによる高齢者の認知症予防・健康寿命の延伸及び健康増進の向上を図ることを目的としたeスポーツいきがい研究事業に対して、両者が相互に協力する包括的な連携を定めたものです。

■調印式コメント

後藤元秀 豊前市長-豊前市で高齢者研究事業を具体的に進める第一歩が刻まれた。eスポーツといえば若者が0.01秒を競う頭の中のスポーツ、オリンピック種目採用も期待されている。この知的スポーツが高齢者はじめ万人に普及していく中で、豊前市は高齢長寿の方々が多い地域であり、こうした方々がeスポーツを通じて心身共により楽しくなる、脳の活性化、健康寿命が伸びていく。そんなチャンスを与えてくれるのではないかと考えている。研究事業を通じてもし実証できれば、“豊前スタイル”として全国に広がっていく、そんな夢も描けるのではと期待している。FeRCの調査研究を豊前市として全力でバックアップしていきたい。

 

作花浩聡 FeRC会長-この豊前市での高齢者研究をきっかけに、全世代にeスポーツが文化として定着できるようにFeRCとして貢献していきたい。また、「地域活性化×eスポーツ」も大切なキーワード。オンライン配信によりイベントは全国どこでも開催でき、世界に発信が可能。例えば豊前で行ったイベント配信を通じて「豊前市に行ってみたい」と思ってもらえるような地域活性化・地域創生効果も充分持っているのがeスポーツ。いろいろな壁を払拭できるeスポーツの効果を常に念頭におきながら、調査研究に取り組みたい。

夏目季代久 九州工業大学教授-eスポーツは様々な種目があるが、高齢者の認知機能増強にどのような効果があるか諸外国の報告を踏まえながらしっかりと調査していきたい。認知機能増強によっていきがいの促進になればと思う。また、このような研究事業が豊前市を起点に全国に広がっていくよう努力していきたいと考えている。

 

 

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