【研究者の眼】平良美津子 視能訓練士②
参画研究者の知見をご紹介する企画「研究者の眼」
フェルク設立時、唯一の眼の専門家/視能訓練士として参画した平良美津子先生インタビュー②です。
『eスポーツと眼』は、eスポーツに関わる実に多くの人が気にしているテーマ。
子どもたちの夢を大切にしたいという平良先生「eスポーツを愛する人々にお伝えしたいコト」とは。
文責:FeRC事務局
(関連記事)【研究者インタビュー】平良美津子 視能訓練士①
❝眼のコンディション❞を知ろう
平良:2022年はFeRC2つのイベントで【眼の検査体験コーナー】を行うことができました。
これは福岡国際医療福祉大学視能訓練学科 潮井川修一先生らのお力添えをいただいて、眼科で行っている屈折検査/遠見近見視力検査/調節力チェック/両眼立体視検査を体験してもらい、眼のコンディションを調べる大切さを啓発したいという試みでした。
(参照)【イベントレポート】in北九州eスポーツサイエンス体験会2022年8月記事
eスポーツプレーヤーの方々の多くは眼について関心も高いです。「眼に良い食べ物とかありますか」などの質問が良くあります。
わたしはどこでも同じお答えをしています、身体に関することは まず自分のコンディションを知ってから対策ですよと。
たとえば健康相談としてざっくり「身体に良い食べ物はなんですか」と聞かれても、その人の年齢/体質/体調/生活環境/課題となっている疾患など、現在地がわからないとまず答えようがないですよね。育ち盛りのこどもに〇〇が良いとしても、ひょっとしたら違う年齢層で何か疾患や体質によっては真逆のものになるかも知れません。
そう、眼については意外と自分のコンディションを知るということの大切さが普及していなくて、そこを飛び越えていろんな情報が溢れているので基本的なことが上手く伝わっていないのではないかという疑問です。
これは❝見えかた❞の変化が激しいこども~若い世代には特に大切です。
見えかたチェックってなに?コンディションチェックってなに?と理解していただくには、体験してもらった方が早いなと。
おかげ様で各イベントでは来場者の皆さん(特に保護者!)に好評でした。
チェックの結果、良い学習環境のためにすぐ眼科に行くべきですよと保護者にお伝えした事例もありました。
あえて3選 eスポーツ眼のチェックポイント
日常的にeスポーツに親しむプレーヤーの多くが、眼の疲れ/眼の重たさ/眼の痛み/首や肩こりなどを自覚されているようです。
そこで、眼のコンディションチェックにも意識が向くよう、3つのチェックポイントをお伝えしています。
チェック①環境の明るさ
現在日常的にプレーしている環境の明るさは適切に保たれていますか?
照度の低い(暗い)環境で、高輝度のモニターを見ていませんか?
逆に明るすぎる環境(スポットライトが眩しいなど)も見えにくいです。
適切な明るさであるか、自己検証してみてください。文庫本を読むのに適切な明るさ程度を目安にしてみてください。
チェック②ドライアイ
眼の乾燥感を自覚することも多いと思います。
集中して凝視するとまばたきの回数が極端に減少することはよく知られています。
ここで要注意なのは、乾燥感の自覚だけで市販目薬に頼るのは良くないという点です。
自分は本当にドライアイなのか、きちんと眼科で検査することを強くお薦めします。
ドライアイにも様々なタイプがあり、単純に「涙が足りないから」とは決めつけられません。
さらにお伝えすると、乾燥感が強いのに調べたらドライアイではなかった…という症例も多いのです。
本当にドライアイなのか、またそのタイプもわからないまま自己判断で市販目薬を…というのは決してお薦めできません。
チェック③見る距離と屈折状態は適切な関係か
屈折という専門用語で申し訳ありません。
眼には「どこにピントが合っているか」屈折という概念があります。
イベントで行っている検査体験のメインはこの屈折状態を調べる点にあります。
例えばー2.00Ðという度数の近視がある場合、(理論的には)50㎝先のものにピントが合っている、ということになります。
詳細は述べませんが、人それぞれこのピントが合っている距離が違うのです。(=屈折状態はまさに個々のコンディション)
この屈折による見えやすい距離と、ゲームデバイスとの距離は合っていますか?ということをチェックして欲しいのです。
もっと具体的に表現すると「いまかけているメガネはデバイスとの適切な距離に合っていますか?」とも言えます。
この適切さがないと、ゲーム時の姿勢が大きく崩れたり、いわゆる「眼に大きな負担がかかり」さらには「身体全体の不調」に繋がることになります。
このチェックは自分ではなかなかできません。眼科、もしくはメガネ専門店でチェックをお薦めします。
※高校卒業ぐらいまでは調節力が強いため眼科をお薦めします
基本的理解でしか前に進めない
眼科では少し前まで、「ゲーム=眼に悪い、悪である」という捉え方もあったようですが、近年こうしたゲーム悪玉論はほぼ見られません。弱視治療にゲームアプリが用いられたりしていますし、私も弱視訓練でゲームをお薦めすることもあります。
一方で、スマホやタブレットの普及により眼精疲労や若年層の急性内斜視の報告も増えています。中にはそれほど長時間の使用でなくてもこれらの不具合が発生するハイリスクの眼というのもありそうです。
やみくもに恐れたり悪玉にするのではなく、またすべてを楽観的に捉えるのではなく、適切な捉え方が必要ですね。
そのためには、私たちは生まれてから眼の発達があるということ、両眼でものを見る両眼視機能を備えているということ、現在の眼のコンディションを定期的にチェックして把握すること、など基本的理解をしっかりと啓発していくべきと考えています。これは今後も大切にしていきたいスタンスです。
事務局:ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします!
(関連記事)【研究者インタビュー】平良美津子 視能訓練士①はこちら
【平良美津子】たいらみつこ 視能訓練士
北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後,1年間トラックドライバー経験。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務,師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て,一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと設立,現在複数の眼科クリニックで勤務。制作/監修した「みるみる手帳」(子どもの弱視斜視治療のための管理手帳)は全国390以上の眼科医療機関で活用中。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)にも積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。Twitterアカウント https://twitter.com/ORTM13?s=20 連載【視能訓練士平良のみるみる日記】は弱視治療保護者に好評