【企業がe!】リーフラス株式会社①井上一馬さんインタビュー

2021.2.11

【企業がe!】リーフラス株式会社①井上一馬さんインタビュー

FeRC参画企業の情熱や取り組みをご紹介する【企業がe!】

第6回は、スポーツスクール事業を中心にリアルスポーツを通じて全国で事業展開を手掛けるリーフラス株式会社井上一馬さんにお話をうかがいました。

全国46,000人以上の会員数を有するリアルスポーツスクールの雄・リーフラスが捉えるeスポーツビジネス像とは?!

創業以来、一貫して捉えてきた地域の抱える社会的課題とは?!

リアルスポーツ事業者ならではの興味深いお話の数々、新たな気づきを与えてくれる充実のインタビュー①です。


eスポーツ/FeRCとの関わり

‐‐‐井上さん、今日はリモートインタビューですがよろしくお願い致します。リーフラスさんはFeRC設立時から参画頂いていますが、そもそものきっかけは何だったのでしょう?

こちらこそ宜しくお願いします。FeRC理事長の磯貝浩久教授とは、以前からメントレアプリ(メンタルトレーニングを行うアプリ)がきっかけでお付き合いさせて頂いてまいりました。そのなかで2020年のFeRC設立時にお声かけいただき、新しい学びになるかも知れないと思い参画する事になりました。

FeRC設立総会 井上さんは写真右から2番目

それまでわたしはeスポーツに対して特別な知識もありませんでしたし、「ゲーム」と一くくりに捉えていたこともあり積極的に後押ししていくべきものというイメージは持っていませんでした。一般的に保護者に多い懸念のとおり、やり過ぎたらいけない、眼も悪くなるよね、メリットよりデメリットの方が大きすぎるとシンプルに思っていたところがありました。

ですが設立直後から、FeRCで研究者の方々から様々なお話をうかがっていると、見方が大きく変わり、もっと知りたい/可能性を感じる!という想いを持つようになりました。

FeRC会員限定セミナーで企業講演も

‐‐‐eスポーツのお話の前に、リーフラスさんと言えばリアルスポーツスクールの雄として有名ですが、このコロナ禍での影響は大きいのではありませんか?

プロスポーツ界では観客が入れないというダメージを大きく受けてしまっていますよね。当社スクールも2020年春ごろ、子供たちの運動/スポーツはちょっと不安だな怖いなという方もいらっしゃって休会するお子さんも多かったです。

しかし夏以降、小中学校の休校があって、“ずっと家にいるのは良くないよな”といろんなお父さんお母さん方が感じて、安全であればなるべくスポーツをやらせたいという需要の高まりを感じた一年でしたね。運動としてだけでなく、実際に顔を合わせた社会性/コミュニケーションも大事、というですよね。

部活動ではないスポーツスクール

‐‐‐リーフラスさんの事業は、スポーツスクール事業/イベント事業/コマース事業/アライアンス事業とか本当に多岐に渡っておられますね。まずはスクール事業についてご紹介頂けますか?

そもそもこのリーフラスは2001年に福岡で創業した企業です。代表の伊藤清隆は、前職学習塾の経営をしていました。スポーツを身近に/競技志向だけでなく楽しくやれる環境/暴言体罰というものを無くしていくために、専門とする指導者が教えていく事がサービスの向上になり、新たな雇用が生まれて、日本のスポーツが幅広くなっていくんじゃないか、と創業されました。

最初のスクール事業はサッカースクールから始まりました。わたし自身、この創業期は現場でサッカーを教えていました。学校の部活とは別のスクールです。

‐‐‐学校の部活とはまた違うのですか?

学校の部活動には本当にいろんなものがあるので一概には言えないところであるんですけど、昔の部活動は“毎日練習して土日も休まない方がいいよ”というような価値観が特に強かった時代でした。

当社は最初から練習は週1日、と決めました。それ以外の曜日は他の種目しても良いし、音楽系の活動をしても良いという形で、一つにとらわれず色んな事をやれる環境を子どもたちに提供出来たら、というところが大きな特徴だったと思います。

当社スクールの指導にあたる人材には社内研修制度があります。教育的な勉強や安全面などの社内基準を厳しく定めています。この基準に合格した人だけが指導して良い、というルールにしています。

‐‐‐2001年創業当初、不安はありませんでしたか?

それはもう、新しい形態でしたので、当時は当然ですが不安でした。

ただ、わたし自身、サッカーをやっていたのですが部活動所属経験がなくて、当時珍しいクラブチームに所属していました。週2~3日の練習だったのですがそれでも充分サッカーが楽しかったし、ひとつでなく多くの学校から子どもが集まるので色んな友達が出来る。週2~3日なのでしっかりリフレッシュしながらサッカーもしっかり上達できる。そういう実体験をもとに自信を持ってやっていったら、ちょっとずつ結果がついて来た、という感じでした。

ありがたいことに事業開始後1年程度で1,000名ぐらいの会員数になりました。もっと自由にスポーツをさせてあげたい、という保護者さんからのニーズの高さを再認識した出来事でした。

当社スクール指導は「認めて/褒めて/励まし/勇気づける」をテーマにしています。

一般的に自分の子どもに対しては野球でもサッカーでも厳しく言ってしまったりしがちですよね。

そこをちゃんと、子供が尊敬する先生に褒めてもらう・認めてもらうと、やっぱりすごく子供の成長をとてもいいし、保護者さんも気持ち良く送り出せる。そういう事だったのかなと思いますね。

女子サッカースクールも多くの支持を集める

その後、現在は全国で46,000~47,000人の会員数に達し、サッカーだけでなく野球/剣道/バスケットボールなど10種目程度に拡大しています。

当社スクールの傾向として、軽度の障害をお持ちのお子様も一緒に入られているのも特徴の一つかもしれません。

学校の部活動支援とは

‐‐‐そして学校の部活動支援事業を展開されていますね?

学校の先生方は年々求められるものが増えていて、お仕事としてたいへんになる一方です。授業/クラスなどの運営/部活動とやっていく中で、過重労働も問題になっています。

部活動顧問は、先生ご自身が経験した事のある種目であればまだ教えやすいのですが、テニスやったことが無いのにテニス部、等の事例が多々みられます。先生方も、子どもたちが一生懸命だから教えたいけど上手く教えてあげられない、子どもたちの熱意に充分応えてあげられない。肉体的疲労とともにそんな葛藤も生まれてきますよね。そうして心身共に余裕が無くなってくるなかで、キツくあたってしまったりとか暴言が出たりとか、そういった複合的な課題が学校にはまだまだあると思っています。私立学校はまだ運営に自由度があると思いますが、公立学校はその辺りの課題が本当に大きいです。

経験のない種目の顧問というミスマッチ。それでも子どもたちに申し訳ないと取り組む結果、教務が後回しになってしまい長時間化する勤務。土日も練習や試合で休日もない。ご家族のある先生などはご自身の子どもの教育的悪影響すら考えられる。先生方の労働環境はあまりに過酷です。

当社の部活動支援事業は、週1~2回の頻度でサッカー部や野球部にスタッフを派遣しています。練習のお手伝いをしたり、顧問教諭と一緒に練習メニューを作成したりします。生徒一人一人の生活指導を含めた管理監督は顧問の先生に引き続きおこなってもらうとして、当社スタッフは専門性の高い練習方法だとかプレーの指導などにあたり、先生と二人三脚で部活動運営していきます。より充実した部活動を子どもたちに提供するサポート事業です。

部活動顧問と二人三脚

公立中学・高校への支援ですから、各市町村の教育委員会との協議で進めています。

もともと、外部指導員という仕組みが国内にありましたが、実際課題がいろいろ出ていました。指導員は個人の方が地元の行政に登録して、登録された中から各学校に割り振られる制度でした。これはあくまで所属が個人なので、考え方に個人差が大きい/学校方針と合わない/子どもたちを指導するための研修教育を受けたことがない等の課題が出てきたのです。実際にどういう指導員を採用したらよいのか、どういう研修をしたら良いのかというあらたな悩みです。

そこで当社のような企業・組織として運営してきた存在が中心となってやった方が良いのではないか、という流れに変わってきています。

(編集注:従来「外部指導員」として存在したが身分が法律上不明確だった。平成29年4月より学校教育法施行規則に「部活動指導員」が新たに規定された。中学校/高等学校等において校長の監督を受け、部活動の技術指導や大会への引率等を行うことを職務とする)

当社は社会的課題の解決をテーマに展開してきました。いま最も課題として強く求められていると感じているのは、やはりこの部活動のあり方です。この20年で、ずいぶんと部活動現場から暴言が減ってきたいう実感は多少あります。暴力はもちろんほとんど無いと思いますが…そういう部活動は淘汰されますし、指導をサービスと捉える事が増えてきています。部活動はもともと、位置づけは学校活動外なんです。そこで当社は、“部活動からスポーツに”という言葉を使っています。スポーツ=楽しむ、開放的、多様化です。決して部活動を否定するのではなくて、スポーツなのだからもっと民間に開放して、本来のスポーツの姿として広めて行きたいと志向しています。

種目は一つに絞らなくていい

もう一つ、プロスポーツチームとの連携事業も増えてきました。福岡では“我らが”と言ってよい存在のソフトバンクホークスさん。3年ぐらい前にお話しする機会があり、「プロ野球として野球人口が減少している問題を抱えている」というお話をうかがいました。

野球人口のすそ野を広げるため、元プロ選手が小中学生に野球教室を開いたりしますが、元プロ選手は上達のための技術指導は長けているけど、そもそもグローブのはめ方であるとかキャッチボールの仕方、“ゼロからイチのところを教える”のはどうしてよいか分からない。当社は当時全国で1万人ぐらいの野球スクール会員がいたので、ホークスさんと提携して野球人口増加のための仕事が出来ないかという話になりました。

現在、正式にホークスさんと提携し九州じゅうに共同スクール「ポルテ×福岡ソフトバンクホークスベースボールスクール」を広げていくよう活動しています。鹿児島~宮崎~熊本~と九州各地でホークスのユニフォームを着た子どもたちが野球をやる環境を作り出しています。

少子化でたいへんでしょう?と聞かれることも多いのですが、私たちは実はそう思っていません。野球界には「子どもたちを先にサッカーに持っていかれる」とおっしゃる方もいるのですが、これはサッカーは受け入れ先が多いからだと思っています。子どもが参加できる野球チームの方が少ないんです、各地域にひとつだけ、とか。

つまりサッカーと比べて環境が限られてしまっているわけで、これを増やしてあげれば…と思っています。

それともう一つ当社の考え方として、種目を一つに絞る必要はないと考えています。野球とサッカーを週1日ずつやっても良いし、バスケットと陸上をやっても良い。確かに少子化ですが1人の子が2種目以上やったら良いわけです(笑)子どもには豊かな可能性があって、どんな種目が楽しいか、やりたいかはいろんなものを経験した方が良い。学年がもっと上がっていったらいずれ自分で選んだら良いと思います。

これには副次的な効果もあって、あちらの種目に生徒を獲られたくない!と指導員たちがより良いサービス/選ばれる上質の指導を目指すようになるんです。この相乗効果で、各指導者たちの底上げになっていき、ゆくゆくは日本のスポーツの質向上に繋がるのではないかと感じています。

—スポーツスクール事業から出発したリーフラス。部活動支援・プロチーム連携事業と広がる事業展開のお話に、社会的課題をしっかり見据えていらっしゃる様子がわかります。そのリーフラスがeスポーツに注ぐ目線とは…続きは次回!


【井上一馬】Inoue Kazuma リーフラス株式会社 上席専務執行役員 ソーシャルアクション統括本部副本部長 西日本エリア統括兼九州支社長

リーフラス創業時はサッカースクール指導員として従事。その後、東京進出・関東圏拡大の責任者として活動。種目の増設を行い現在は10種目を実施。M&A後の組織改革や新事業開発などを手掛ける。プロバスケットボールチームの取締役兼GMとしてプロスポーツの経営・運営にも従事。その後、専門学校にてスポーツマネジメント学科の新設に取り組み、教務・営業も兼ねる。現在は部活動の改善・施設管理・スポーツ療育(障害児支援)・体育授業支援・健康増進・地域活性化など、「スポーツ・教育・健康・地域」をテーマに様々活動を行っている。e-sportsが上記テーマと融合することでそれぞれが発展する可能性を感じてFercに参加。

【リーフラス株式会社】https://leifras.co.jp/

2001年創業、本社東京都港区。資本金/1億2,500万円(資本準備金含む)スポーツスクール運営/スポーツイベントの実施/スポーツウェア・グッズの販売ほか様々な事業を手がける。福岡eスポーツリサーチコンソーシアム団体運営会員。

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FM福岡 【Have Fan!!e-sports】リーフラス㈱出演

2021.1.19
FM福岡 【Have Fan!!e-sports】に FeRC参画企業 リーフラス株式会社が出演
 
井上一馬 専務執行役員
FM福岡は福岡に根ざす局として、e-sportsに携わる人々とのトークを通じて積極的にe-sportsのサポート&発信をしています。FeRC参画会員も多数出演中です
 
2週連続の出演でした!
第一回 1月4日(木)25:00〜放送回
第二回 12月24日(木)25:00〜放送
 
全国で4万5千人以上の会員にスポーツスクールを提供するリーフラスさん、プロスポーツ支援/施設運営事業など幅広く事業展開していくなかで、地域活性化や部活動支援にも繋がるeスポーツに熱い想いで取り組まれています
※過去放送はラジオクラウドでも聴けます

FM福岡 【Have Fan!!e-sports】は将来eスポーツで活躍する未来人の育成を目指して、関わる人々が毎週様々に出演しています。
(これまでの主な出演者)
中島賢一さん(福岡eスポーツ協会会長)☆古賀聡さん(ニワカソフト株式会社代表取締役)☆作花浩聡会長(大原学園福岡校eスポーツ部顧問)☆磯貝浩久理事長(九州産業大学)☆西薗秀嗣教授(九州産業大学)☆谷川剛士先生(TECH.C福岡)☆伊藤僚洋先生(FPSゲーミングコーチ)☆大原学園eスポーツ部の皆さん☆神崎保孝先生(臨床心理士)☆ニワカゲームス古川選手/荒木選手/龍選手/小田英天取締役/eスポーツ事業部太田寛さん☆鈴木達朗事務局長(FeRC)☆古門良亮先生(西日本工業大学)☆夏目季代久教授(九州工業大学)☆平良美津子先生(福岡市立こども病院眼科視能訓練士)☆その他多数
 
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【企業がe!】大原学園福岡校「eスポーツ部」が目指す未来

2020.11.3

【企業がe!】学校法人大原学園福岡校  作花浩聡 専門課程教務部次長

 

※この内容は、大原学園福岡校の専門課程教務部次長であり、同校eスポーツ部顧問でもある作花会長が2020年2月のFeRC設立時に受けたインタビューを基に、FeRC事務局が再構成しています。

eスポーツ「教育に活かしたい」

大原学園福岡校は2019年2月1日、クラブ活動として「eスポーツ部」を設立しました。創部は、福岡eスポーツ協会中島賢一会長との出会いが大きなきっかけでした。

私は当時、大原学園として新しい学科になりうる内容についての調査研究や情報収集を進めており、ふと出席したセミナーで初めて、登壇者として参加していた中島会長に出会いました。その中で初めてeスポーツの話を聞き刺激を受け、セミナー終了直後に中島会長へ声をかけアポイントをとりました。後日、中島会長を訪ねたところ、「これは教育に充分活かすことができる内容だ」と確信しました。当校の校長にその旨報告し、中島会長のサポートもあって大原学園初のeスポーツ部が誕生することになりました。

福岡eスポーツ協会中島賢一会長との出会い

私自身はファミコン世代で、小中学生の頃はゲームに親しんでいましたが、高校では野球部の活動がとても忙しく、ゲームをする時間が自然となくなっていました。

某テレビ局の取材が入る中、在校生へのeスポーツ部設立説明会を経て、1年目は部員18名でスタートしました。大原学園にはさまざまな学生のクラブ活動があり、野球、サッカー、バスケ、卓球、剣道など幅広く行われています。eスポーツ部も一般的ないわゆる「部活動」として、放課後に2時間だけ活動に取り組んでいます。

eスポーツ部室と学生の様子

「監督やコーチはいますか?」とよく聞かれるのですが、顧問は私が務め、専属コーチはいません。eスポーツはデジタルゲームであり、学生の中には上手な人がいたりします。留学生の部員の一人は韓国の世界大会(LoL)出場経験者という学生もいます。学生間で教え合えば、まずは動き始められます。やったことのないゲームタイトルは、経験のある学生が教えてあげることで十分理解できます。部活動はあくまで「学生中心」がモットーですから、学生の中から部長を任命し、グループ討議をしながら進めていったり、ゲームを実際に知る機会もつくったりしています。

観戦者も意識した部室づくり

部室を新設するに当たっては、家で用意できないような環境を作ることを意識しました。ゲーミングPCは個人で購入すると高額で手が出ないという学生もいるかも知れないため、学校の設備としてデスクトップPCとノートPCをそれぞれ準備しました。PCのスペックが違うとゲームにどのような影響が出るのかなどといった体験もできます。また、ゲーミングチェアは全てを同じ物にせず、メーカーや製品の違う商品を複数置いています。イスは座り心地の柔らかさなど、個人によってかなり好き嫌いがありますので、数種類準備することでさまざまなタイプを比較体験できるようにしました。これは、デバイス全般にも言えることで、マウスやコントローラー、ヘッドセット、キーボード、モニターなども数種類用意しました。

ゲーミングチェアはメーカーや種類の違うものを用意
コントローラーも複数種類

観戦用として大画面モニターも完備しています。eスポーツは個人で遊ぶのとは違い、「第三者からプレイを見られる」ことを前提とした競技です。今後、eスポーツを文化として定着させるためには、観客を増やしていくという視点が大事になると考えています。プレイヤーだけが増えていくだけでは文化としての定着は難しく、盛り上がりは一過性で終わってしまいます。

“観客”を意識した大画面モニター

eスポーツ市場の拡大に向けては、中島会長も「見にくる人が増えることが発展のポイントだ」と指摘されています。プロ野球やJリーグでも、選手たちが「魅せる」「魅了する」プレイをすることで、応援している観客は盛り上がりますよね。eスポーツのプロ選手の中には、そういう事をすでに意識して日頃から取り組んでいる方もいます。

部活動といえども、きちんと活動をしたいと考え、大原学園福岡校eスポーツ部ロゴを作りました。当時、活動実績がない状況であるにも関わらず、部室づくりにご支援・ご協力をしてくださった企業さんのロゴも一緒に部室内に掲示させて頂いています。このように、部活動の環境面でも一つ一つに意味を持たせ、日頃から「部活動は学校内だけで完結するものでなく、多数の企業や社会との関わりがあってのことなんだよ」などと、全てが教育につながるように、学生へ伝えています。

ご支援・ご協力企業のロゴも必ず掲示している

世界大会で社会とのつながり構築

EVO Japan 2019 (注:Evolution Championship Series 2019年2月福岡市で開催された格闘ゲーム分野における世界最高峰の大会)が福岡市で開催された時には、当校は出場選手の事前練習会場として教室を無料開放し、主催者と連携して実際に大会で使用される機材を準備しました。日本の参加者だけでなく、海外数カ国からもプロを含む選手が来場され、部室も使っていただきました。

世の中ではグローバル化が叫ばれていますが、日常の学校生活で学生がグローバル化を実感するのはなかなか難しいのが現実です。ですが、EVOエントリー選手への教室開放では実際に海外の選手に会え、ゲームという話題を介して会話が生まれ、コミュニケーションが発生していました。eスポーツ部の部長である学生もその場に立ち会わせていたのですが、そうした体験が確かに教育につながっていると実感しました。

2019年福岡市で開催のEVOジャパン

また、当校の公務員コースの学生延べ260名以上には、EVO Japan 2019の会場運営スタッフとして全面参加してもらいました。当校は職業実践専門課程(注: 企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程。文部科学大臣の認定が必要)が認定されていますが、このように学外と接点を持ち、実践教育のレベルをより引き上げられる好例となりました。

このゲーム大会は福岡市がバックアップに取り組んでいたので、公務員コースがある当校としては、公務員が取り組む仕事の一端を体験する良い機会にもなりました。

簿記、IT、医療・・・ 教育的な波及効果に期待

当校の学科は簿記会計をはじめとして公務員、情報処理、スポーツトレーナー、介護医療保育など、多彩な学科コースがあります。eスポーツは、どの学科にも何らかの波及効果があると考えています。

今後、eスポーツの普及・発展に向け、ある仮説を立てています。競技者が増え、観戦者が増え、プロ選手が増え、プロチームが増える。それをサポートするようなトレーニング機関が増える、ビジネスとして動きが加速していく。端的に言うと、ビジネスとしてお金が動き始めるわけです。例えば、簿記会計分野であれば、いずれeスポーツビジネスが企業の案件として具体化する中で、「eスポーツって何なんだ?」とその時になって知ろうとするよりも、今のうちから知識を持っておけば備えられます。

ゲームはオンライン対戦も盛んですから、ゲーム機本体だけでなく、通信技術、ネット配信、データ分析などの技術の発展が今後も激しくなります。IT技術情報処理の学科の学生がeスポーツに触れる大切さは言うまでもありません。

公務員コースも例外ではありません。日本はeスポーツ発展のための法律が追いついていないと言われています。今後、法律や諸制度を手がけることになる公務員コースの学生にも、今から知っておいてほしいですね。

eスポーツはどの学科にも波及効果がある

さらに、「プレイヤーの姿勢が悪い」「腱鞘炎にかかった」などの事例も増えるでしょう。姿勢改善やマッサージ、栄養管理といったニーズの拡大が見込めるため、スポーツ分野の学科が大いに関係してきます。今後、eスポーツ専門のトレーナーやプロ選手に帯同するトレーナーなどが増えてくるのは必然と言えます。

医療介護分野においてもeスポーツは注目されつつあり、障がい者の競技参加や、高齢者の認知症予防ツールとしての発展が予測されます。各施設でeスポーツのイベントや取り組みが行われる社会になると考えられ、「eスポーツ知っていますよ」という医療介護従事者の方がより貢献できる人材と言えます。

こうして考えると、われわれ大原学園としては「eスポーツをやらない理由がない」と結論付けました。

ゲームの負のイメージ「覆したい」

保護者、特に母親にとっては、ゲームに対して懸念や心配ごとが多々あるのが一般的です。

「ゲームをやらせたくない」「視力が悪くなるのではないか」「ゲーム依存になってしまうのではないか」など、心配はさまざまだと思います。これについては、正しく説明できる人が日本にどれだけいるでしょうか。心配を抱く人たちに、ゲームに対する理解をどれだけ深めることができるかが鍵になると思います。

どんなものでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。例えば、アルコール摂取と健康の問題では、Jカーブというデータがあります。全く飲まないよりも、低量飲酒する人の方が総死亡率は低い傾向にあり、一方、飲酒量を増やしていくと総死亡率は上がっていくというものです。つまり、適量飲む人の方が健康かも知れない、多すぎる量は健康を害する傾向、というものです。

これはゲームも同じではないでしょうか。どのようなものでも、ある一定の限度を超えると良くない事態になると思います。であるにも関わらず、「全て良い」「全て悪い」という0か100かという議論には違和感があります。こうしたものは、さまざまな研究データを基に、教育機関が担っていくべきものではないかと感じています。例えば当校は専門学校として高校との接点がありますが、これからは小中学校などへも積極的に情報発信していくことができるのではないかと考えています。

私の個人的感想ですが、どちらかと言えば一人で家にいて寡黙にゲームするのではなく、オンライン上でもオフライン上でも、みんなで集まってやるeスポーツにより強いメリットを感じています。ネット上では匿名なので暴言を吐く人も多いなどの問題も指摘されますが、これはゲームとは関係なくネットリテラシーの教育を受けていないことが原因だと考えられます。また人々がリアルに集まると相手が目の前にいるので、他者を称える、教え合う・笑顔や笑い声が上がる、といったコミュニケーションの輪が広がります。このようにみんなが集まるコミュニティの場は大切だなぁと実感しています。

小中学生の子どもを持つ保護者からすると、ゲームセンターのイメージは何だか不健康で薄暗いイメージがあり、子どもの安全を心配する声を聞きます。たとえば大原学園の部室に「小中高校生のみなさん、部室に来ていいですよ」と呼びかけて一緒に活動できたら、保護者の心配もまた変わってくるのではないでしょうか。

eスポーツは公平で、あらゆる壁を払拭してくれるという特徴があると感じています。例えば、小学生が年齢も体格もはるか上の大学生や専門学校生、もっと言うと大人に勝つこともありえます。性別障害の有無も関係ありません。当校のeスポーツ部には留学生も5名所属していますが、言葉の壁もゲームはなくしてくれると実感しています。勝敗や力量によらず、ゲームを通してのコミュニケーションは誰もがフラットな関係になれるという効果があるのです。

企業や教育機関を巻き込み普及目指す

当校eスポーツ部は、設立時の目標として「日本、福岡でのeスポーツ普及」を掲げました。広く普及させるためには自分たちもまず試合に参加する必要があると思い、2019年いばらき国体の文化プログラムにてeスポーツの大会がありましたので、そこを目指して予選にエントリーしました。このいばらき国体の福岡県予選では選手として参加するだけではなく大会運営スタッフとしてもeスポーツ部学生は参加しました。今後も積極的に学生には活動させたいと考えています。

部活動といってもただゲームをやっているだけでしょ?」と言われることも多いのですが、学生たちは大会の運営スタッフとして参加したり、障害者の子供向けの仕事体験イベントにeスポーツブースを設けたりするなど、健全にゲームに関わっていると言えます。この障害者向けイベントの終了後に参加者の母親より下記メッセージが送られてきました。「今日は、お世話になりました。子供は大満足で、帰ってからもずっと『楽しかった~』と言ってます。前日からの準備とお聞きしました。連休返上で、有難いです。生徒さんという立場にも関わらず本当に楽しく、分かりやすく指導下さり有り難う御座いました。(原文ママ)」とお礼を頂いたのでeスポーツ部員に伝えた所、準備や当日運営の疲れは一気に吹き飛んでいました。自分たちの好きなゲームを通して誰かのために何かを行い、感謝され、やってよかったと感じられる。この様な体験はまさに実践教育の一部だと思いませんか?

部活動としてのeスポーツ部

部室内で日々の学生たちの活動を見ていると、「頭をとても使っているなあ」と実感しています。何事もそうですが、真剣にやると凄く疲れるんです。ゲームで疲れたから息抜きに別のゲームをやったりすることもありますね(笑) 知らない人からすれば、ずっとゲームをやっていると思われますが、気分転換することで頭をリフレッシュさせているようで、どうも頭の使い方がその都度違う感じがしています。日々の活動は2時間なので時間を無駄にしないように取り組んでいるのかもしれません。

「eスポーツの普及を目指してどうなるのか」「普及すればどうなるのか」などの疑問ついて話す機会がありますが、eスポーツの普及は、最終的に関連する企業や仕事が増え、会社の中に専門部署ができたりすることなどによって、雇用につながると期待しています。雇用の創出は日本社会への貢献です。そういう機会を教育機関として増やしたいと願っているのです。

ある企業から今後eスポーツに参入したいのでeスポーツを理解しているeスポーツ部員を採用したいと連絡を受けたこともあります。

小学校から専門学校・大学まで、学校はたくさんあります。学校それぞれにさまざまな考え方があり、「eスポーツはまだよく分からないから学校としてやらない」と思っている学校も多いのではないでしょうか。ネガティブなイメージがあったり、興味を持っている人がいたり、いろいろだと思います。一度、学校の教育関係者が一堂に集まって、eスポーツを体験して交流する機会があるとイメージがガラリと変わることもあると思います。

また、企業の中には学校よりも早く、eスポーツに興味や期待を持っている例が少なくありません。当校の部室に機材やソリューションを提供してくれる企業もとても増えています。企業だけでなく、教育界でもそのような動きがどんどん出てくると理想的だと願っています。

何事にも当てはまると思いますが、使い方次第で良くもなれば悪くもなる。正しい使い方を誰かが示すことが大事であり、正しい使い方を理解しようとすることが大事です。

ゲームというジャンルであるeスポーツもまさにこれに当てはまると考えていますので、正しい取組方法を示すことが出来るようにこれからも取り組んでいきたいと考えています。


【作花 浩聡】(Sakuka Hiroaki) 所属:学校法人大原学園 福岡校

高校卒業後、大原学園小倉校に進学。その後福岡校の教務職員として就職。簿記検定受験クラス、民間就職の指導を担当後、総務職に異動。受付・学生管理・経理の責任者を経験後、再度教務担当部署へ異動。現在は専門課程教務部次長でありeスポーツ部顧問。福岡地域戦略推進協議会(FDC)eスポーツビジネス創出分科会にて2019年2020年の会長就任。

主なメディア出演として、ジェイコム九州(福岡人図鑑第74回)・FM福岡(Have Fun!!e-sports)・RKB毎日放送(エンタテ!区)・FBS福岡放送(めんたいワイド)・テレQ(ベストでeスポ!)・西日本新聞(もっと九州・ファンファン福岡)など。

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