2020年度FeRC研究紹介

2021.4.11

FeRCは2021年2月で設立1周年を迎えました。この1年間でのeスポーツ研究についてご紹介します。

この1年間の研究の紹介

①eスポーツプレイヤーのパフォーマンスと関連する認知要因の実験的検討(2020年)

FeRCの第一弾研究となったこのリサーチは、eスポーツにおいて「どう判断しているか」「どこを見ているか」といった認知要因について研究したもの。特に複数のものを同時に見る能力=複数対象追跡のスキルが上がると、グランツーリスモのタイムが短縮されたという結果が得られました。このようなトレーニングを行う事でタイムをもっと短く出来るのではないかという可能性が示された研究です。なお、この研究での複数対象追跡トレーニングはカナダモントリオール大学で開発され世界中で研究対象となっているニューロトラッカーが用いられました。

複数対象追跡(MOT)スキルトレーニングとして活用されるニューロトラッカー
研究では博多を拠点とするニワカゲームス選手が協力

ニューロトラッカーは特にeスポーツのみならず、一般の運転スキルの向上、リアルスポーツアスリートによる競技スキル向上、学習時における集中力持続時間向上などが期待され、幅広い分野で活用されています。

②競技レベルの違いによるeスポーツプレー中の視覚探索方略及び感情状態の比較(2020年)

感情状態はeスポーツプレー中の脳波を測定し、熟練者と非熟練者を比較しました。熟練者はプレー中もリラックスした状態をキープし、途中不安になったりせず安定した脳波の状態でプレーが出来ている事が明らかになりました。非熟練者は場面によって興奮したりするなど感情の起伏がみられました。eスポーツ熟練の為には、感情の起伏を抑えコントロールするトレーニングが重要ではないかと示唆されました。

研究にあたる古門良亮先生(西日本工業大学)
FPS熟練プレーヤーは画面のどこを見ているか

視覚探索方略は、プレー中いつどこをどれくらい見ているか、という測定を行いました。熟練者と非熟練者で大きな違いがあり、熟練者は味方の動きをよく見る事が多いという事が数値として明確に確認できました。チームプレー、チームワークが重要なゲームにおいてこれはたいへん面白い結果でした。

③ゲーミンググラスがeスポーツ使用時の自律神経に及ぶ影響(2021年) 詳細はこちらを参照

eスポーツによって身体的精神的疲労が考えられますが、それらに対してゲーミンググラスがどのような影響を及ぼすのか調査しました。結果、ゲーミンググラス(ニデック社G-SQUARE)を使用すると疲れにくくなることが自律神経のデータから明らかになりました。

G-SQUAREとニデック社インタビュー記事はこちら  

TEHC.C福岡でのプレーヤー自律神経測定
G-SQUAREウェブサイトにて公開

④eスポーツ実施を通した地域高齢者の認知症予防(2021年) 一般公開資料はこちらを参照

福岡県豊前市との協定に基づき行いました。eスポーツ(グランツーリスモ・ぷよぷよ)をおこなった群とおこなわなかった群にわけ様々な指標で評価しました。まず一つ、高齢者の生きがい・幸福感が変わるのか調べたところ、明確ではないがeスポーツをおこなった群は実施後の方が「昔の自分を取り戻した」傾向が見られました。認知機能そのものはトレイルメイキングテストとワンバックタスクによって脳の情報処理能力について調べました。これもeスポーツ実施による改善傾向が見られました。身体能力においては開眼片足立ちと握力について調べたところやはり向上の傾向が見られました。※豊前市報告会の模様はこちら

豊前市では後藤市長も参加の対戦会開催も
開眼片足立ち測定。eスポーツによる身体能力の変化も調査

対象人数がそれほど多くなかったので明確な差として出せるまではいきませんでしたが、このように良い影響の可能性として示されたことが大きかったです。今後は対象者を増やしながら継続的に研究していきたいと思っています。豊前市後藤市長はたいへん積極的にeスポーツにも期待を寄せられ、後藤市長との対戦会は大いに盛り上がり、高齢者に対するeスポーツの可能性の大きさ・楽しさを感じました。

今後の展望について

作花会長:豊前市研究を評価頂いた会員企業リーフラス株式会社さんが、大分県中津市の温泉宿泊施設コアやまくに内にeスポーツ機材を揃え、地域で愛されるeスポーツ施設山国eeeスポーツフィールドをオープンさせました。(オープニングイベントの模様はこちら)このように各地域で気軽に皆で楽しめるeスポーツの動きに繋げて行けたらと考えています。また普及に伴い増えるeスポーツプレーヤーに対するアンケートリサーチも進めて行く予定です。

磯貝理事長:研究方面の展望として、FeRCの研究者や企業の共同執筆で「eスポーツの科学的な視点」で執筆した本を出版予定です。(2021年9月に向け執筆中)またこれまで自然科学的な研究が多かったのですが、今後はこれに加え社会科学、例えば町おこしのコミュニティ的な研究でまとめてみるなど、幅広い参画研究者のお力でやって行きたいと考えています。

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ReyCyil選手と対談

2021.4.9
2021年9月刊行予定
『eスポーツを科学する』
ベースボールマガジン社 / 編著:磯貝浩久、西薗秀嗣
監修:福岡eスポーツリサーチコンソーシアム

本に収録予定の対談記事取材のため、
福岡を拠点に活躍するSengokuGamingレインボーシックスシージプロプレーヤーReyCyil選手との対談と座談会を行いました
右から)ゲーミングコーチ伊藤僚洋先生、ReyCyil選手、西薗秀嗣教授
人間的にも魅力あふれるReyCyil選手
対談は磯貝浩久教授と
世界で戦う選手のコメントには力がある
対談中の磯貝浩久教授

お話はReyCyil選手の生い立ちや戦績から、モチベーションづくり・チームのこと・日常の生活習慣や健康管理などにまで及びました。お話の詳細は本に収録されます!

座談会の模様
株式会社戦国(Sengoku Gaming)中島社長、ゲーミングコーチ伊藤僚洋先生ベースボールマガジン社石根様、BASラボ斉藤嘉子先生、ありがとうございました😆😆世界で活躍するプロプレーヤーならではのお話の数々、とても盛り上がりあっという間のひとときでした😆
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“eスポーツの科学”出版計画進行中!

2021.4.8

FeRC監修【eスポーツの科学】(仮題)出版予定!

FeRCでは、eスポーツに関わる人々/これから関わりたいと考えている人々/興味のある方々などに広くお読みいただくための本【eスポーツの科学】を2021年9月出版予定です。※タイトル及び出版時期は変更の可能性があります

福岡eスポーツリサーチコンソーシアムに参画する各専門領域の研究者・専門家・企業などにより、鋭意執筆中!

内容は…順次お知らせできるタイミングで発信してまいります。

バイオメカニクス/スポーツ心理/脳情報工学/教育関係者/コミュニティ研究/ゲーム研究者/臨床心理士/視能訓練士など様々な領域の角度からeスポーツを科学した本、どうぞお楽しみに!

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イベント報告≫親子でeスポーツ体験会

2021.3.22

3月20日(土)やすらぎの郷やまくに にてeスポーツ体験会開催

大分県中津市に山国eeeスポーツフィールド誕生

大分県中津市山国町のコアやまくにに、温泉施設「やすらぎの郷やまくに」があります。FeRC参画企業リーフラス株式会社が管理運営されている温泉・宿泊・研修施設を兼ね備えた、地域の人々に愛されている施設です。※リーフラスインタビュー記事はこちら

ここに山国eeeスポーツフィールドが誕生したことを記念して、親子でeスポーツ体験会が開催されました。

FeRCからも、会員研究者や企業が協力参加しました!多くの親子が参加したイベント、今回はその模様をリポートします!

潮井川修一先生講演【eスポーツと眼の関係~ゲームとの正しい付き合い方とは?~】

潮井川修一先生視能訓練士(国家資格)という両眼視機能の専門家であり、福岡国際医療福祉大学でご活躍の研究者です。FeRC参画研究者としても、眼とeスポーツの関係について啓発活動や研究にご尽力いただいています。

保護者なら誰しも気になるところの、「ゲームで眼が悪くなるのでは?」などの疑問に対して、まず眼の構造や近視遠視などの基礎知識を紹介しながら分かりやすくお話し頂きました。米国眼科学会が紹介している20-20-20ルール ※20分ごとに休憩し20フィート(約6m)以上遠くを20秒見る 等についてもお話しがありました。保護者の方々にも、全て「ゲームは悪い」とするのではなく、上手な付き合い方について理解が深まったのではないかと思います。

ニワカゲームスメンバー登場!

ニワカゲームスによるグランツーリスモ解説

お待ちかねeスポーツ体験!博多を拠点に活躍するeモータースポーツチーム「ニワカゲームス」のメンバーさんが登場!国体2位の龍選手を輩出しているほか、JeGT正式参戦中の有名チームです。

まずはグランツーリスモの説明と古川拓己選手による走行披露!見事なドライビングと「たかがゲームじゃない、シミュレーターだ!」というとてもシビアな世界だ、と親子で驚かれていました。

古川拓己選手 初めて見る人も「凄い!」さすがの走行

親子で楽しもう!

さていよいよeスポーツ体験会です!

古川選手が丁寧にレクチャー♪

こちらは ぷよぷよ 国体プログラムにも採用されたタイトルで、女子も楽しくトライ!親子で対戦、って実は普段なかなかしないんですよね、という声も。

親子対決はだいたい保護者が負ける(笑)
お父さん…と思ったら潮井川先生でした

新しい脳認知トレーニング ニューロトラッカー体験

アビスパ福岡J1昇格の原動力となった新しい脳認知トレーニング ニューロトラッカーneurotrackerの解説と体験会!

脳認知トレーニング解説するFeRC鈴木事務局長

スポーツ・勉強・職場・eスポーツ・高齢者運転など様々な場面で重要性が指摘される脳認知機能のトレーニングについて解説がありました。FeRCでもリサーチ第一弾はこのニューロトラッカーが研究で用いられ、ニワカゲームス選手の走行タイム短縮という結果が得られました。マンチェスターユナイテッドはじめ世界中のトップクラブチームが採用するニューロトラッカー、もちろん皆様初体験でした。

ニューロトラッカーは複数対象追跡(MOT)の一つ

盛況のうちに終了!

和の空間にeスポーツという、山国eeeスポーツフィールド、とても素敵でした。ご参加の親子の皆様ありがとうございました。我々FeRcも“eスポーツを科学する”をもとに、皆様に楽しんでいただけるイベントに参加出来てたいへん楽しく嬉しい一日でした!主催のリーフラス株式会社井上様、岩尾様、ありがとうございました!

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【企業がe!】リーフラス株式会社①井上一馬さんインタビュー

2021.2.11

【企業がe!】リーフラス株式会社①井上一馬さんインタビュー

FeRC参画企業の情熱や取り組みをご紹介する【企業がe!】

第6回は、スポーツスクール事業を中心にリアルスポーツを通じて全国で事業展開を手掛けるリーフラス株式会社井上一馬さんにお話をうかがいました。

全国46,000人以上の会員数を有するリアルスポーツスクールの雄・リーフラスが捉えるeスポーツビジネス像とは?!

創業以来、一貫して捉えてきた地域の抱える社会的課題とは?!

リアルスポーツ事業者ならではの興味深いお話の数々、新たな気づきを与えてくれる充実のインタビュー①です。


eスポーツ/FeRCとの関わり

‐‐‐井上さん、今日はリモートインタビューですがよろしくお願い致します。リーフラスさんはFeRC設立時から参画頂いていますが、そもそものきっかけは何だったのでしょう?

こちらこそ宜しくお願いします。FeRC理事長の磯貝浩久教授とは、以前からメントレアプリ(メンタルトレーニングを行うアプリ)がきっかけでお付き合いさせて頂いてまいりました。そのなかで2020年のFeRC設立時にお声かけいただき、新しい学びになるかも知れないと思い参画する事になりました。

FeRC設立総会 井上さんは写真右から2番目

それまでわたしはeスポーツに対して特別な知識もありませんでしたし、「ゲーム」と一くくりに捉えていたこともあり積極的に後押ししていくべきものというイメージは持っていませんでした。一般的に保護者に多い懸念のとおり、やり過ぎたらいけない、眼も悪くなるよね、メリットよりデメリットの方が大きすぎるとシンプルに思っていたところがありました。

ですが設立直後から、FeRCで研究者の方々から様々なお話をうかがっていると、見方が大きく変わり、もっと知りたい/可能性を感じる!という想いを持つようになりました。

FeRC会員限定セミナーで企業講演も

‐‐‐eスポーツのお話の前に、リーフラスさんと言えばリアルスポーツスクールの雄として有名ですが、このコロナ禍での影響は大きいのではありませんか?

プロスポーツ界では観客が入れないというダメージを大きく受けてしまっていますよね。当社スクールも2020年春ごろ、子供たちの運動/スポーツはちょっと不安だな怖いなという方もいらっしゃって休会するお子さんも多かったです。

しかし夏以降、小中学校の休校があって、“ずっと家にいるのは良くないよな”といろんなお父さんお母さん方が感じて、安全であればなるべくスポーツをやらせたいという需要の高まりを感じた一年でしたね。運動としてだけでなく、実際に顔を合わせた社会性/コミュニケーションも大事、というですよね。

部活動ではないスポーツスクール

‐‐‐リーフラスさんの事業は、スポーツスクール事業/イベント事業/コマース事業/アライアンス事業とか本当に多岐に渡っておられますね。まずはスクール事業についてご紹介頂けますか?

そもそもこのリーフラスは2001年に福岡で創業した企業です。代表の伊藤清隆は、前職学習塾の経営をしていました。スポーツを身近に/競技志向だけでなく楽しくやれる環境/暴言体罰というものを無くしていくために、専門とする指導者が教えていく事がサービスの向上になり、新たな雇用が生まれて、日本のスポーツが幅広くなっていくんじゃないか、と創業されました。

最初のスクール事業はサッカースクールから始まりました。わたし自身、この創業期は現場でサッカーを教えていました。学校の部活とは別のスクールです。

‐‐‐学校の部活とはまた違うのですか?

学校の部活動には本当にいろんなものがあるので一概には言えないところであるんですけど、昔の部活動は“毎日練習して土日も休まない方がいいよ”というような価値観が特に強かった時代でした。

当社は最初から練習は週1日、と決めました。それ以外の曜日は他の種目しても良いし、音楽系の活動をしても良いという形で、一つにとらわれず色んな事をやれる環境を子どもたちに提供出来たら、というところが大きな特徴だったと思います。

当社スクールの指導にあたる人材には社内研修制度があります。教育的な勉強や安全面などの社内基準を厳しく定めています。この基準に合格した人だけが指導して良い、というルールにしています。

‐‐‐2001年創業当初、不安はありませんでしたか?

それはもう、新しい形態でしたので、当時は当然ですが不安でした。

ただ、わたし自身、サッカーをやっていたのですが部活動所属経験がなくて、当時珍しいクラブチームに所属していました。週2~3日の練習だったのですがそれでも充分サッカーが楽しかったし、ひとつでなく多くの学校から子どもが集まるので色んな友達が出来る。週2~3日なのでしっかりリフレッシュしながらサッカーもしっかり上達できる。そういう実体験をもとに自信を持ってやっていったら、ちょっとずつ結果がついて来た、という感じでした。

ありがたいことに事業開始後1年程度で1,000名ぐらいの会員数になりました。もっと自由にスポーツをさせてあげたい、という保護者さんからのニーズの高さを再認識した出来事でした。

当社スクール指導は「認めて/褒めて/励まし/勇気づける」をテーマにしています。

一般的に自分の子どもに対しては野球でもサッカーでも厳しく言ってしまったりしがちですよね。

そこをちゃんと、子供が尊敬する先生に褒めてもらう・認めてもらうと、やっぱりすごく子供の成長をとてもいいし、保護者さんも気持ち良く送り出せる。そういう事だったのかなと思いますね。

女子サッカースクールも多くの支持を集める

その後、現在は全国で46,000~47,000人の会員数に達し、サッカーだけでなく野球/剣道/バスケットボールなど10種目程度に拡大しています。

当社スクールの傾向として、軽度の障害をお持ちのお子様も一緒に入られているのも特徴の一つかもしれません。

学校の部活動支援とは

‐‐‐そして学校の部活動支援事業を展開されていますね?

学校の先生方は年々求められるものが増えていて、お仕事としてたいへんになる一方です。授業/クラスなどの運営/部活動とやっていく中で、過重労働も問題になっています。

部活動顧問は、先生ご自身が経験した事のある種目であればまだ教えやすいのですが、テニスやったことが無いのにテニス部、等の事例が多々みられます。先生方も、子どもたちが一生懸命だから教えたいけど上手く教えてあげられない、子どもたちの熱意に充分応えてあげられない。肉体的疲労とともにそんな葛藤も生まれてきますよね。そうして心身共に余裕が無くなってくるなかで、キツくあたってしまったりとか暴言が出たりとか、そういった複合的な課題が学校にはまだまだあると思っています。私立学校はまだ運営に自由度があると思いますが、公立学校はその辺りの課題が本当に大きいです。

経験のない種目の顧問というミスマッチ。それでも子どもたちに申し訳ないと取り組む結果、教務が後回しになってしまい長時間化する勤務。土日も練習や試合で休日もない。ご家族のある先生などはご自身の子どもの教育的悪影響すら考えられる。先生方の労働環境はあまりに過酷です。

当社の部活動支援事業は、週1~2回の頻度でサッカー部や野球部にスタッフを派遣しています。練習のお手伝いをしたり、顧問教諭と一緒に練習メニューを作成したりします。生徒一人一人の生活指導を含めた管理監督は顧問の先生に引き続きおこなってもらうとして、当社スタッフは専門性の高い練習方法だとかプレーの指導などにあたり、先生と二人三脚で部活動運営していきます。より充実した部活動を子どもたちに提供するサポート事業です。

部活動顧問と二人三脚

公立中学・高校への支援ですから、各市町村の教育委員会との協議で進めています。

もともと、外部指導員という仕組みが国内にありましたが、実際課題がいろいろ出ていました。指導員は個人の方が地元の行政に登録して、登録された中から各学校に割り振られる制度でした。これはあくまで所属が個人なので、考え方に個人差が大きい/学校方針と合わない/子どもたちを指導するための研修教育を受けたことがない等の課題が出てきたのです。実際にどういう指導員を採用したらよいのか、どういう研修をしたら良いのかというあらたな悩みです。

そこで当社のような企業・組織として運営してきた存在が中心となってやった方が良いのではないか、という流れに変わってきています。

(編集注:従来「外部指導員」として存在したが身分が法律上不明確だった。平成29年4月より学校教育法施行規則に「部活動指導員」が新たに規定された。中学校/高等学校等において校長の監督を受け、部活動の技術指導や大会への引率等を行うことを職務とする)

当社は社会的課題の解決をテーマに展開してきました。いま最も課題として強く求められていると感じているのは、やはりこの部活動のあり方です。この20年で、ずいぶんと部活動現場から暴言が減ってきたいう実感は多少あります。暴力はもちろんほとんど無いと思いますが…そういう部活動は淘汰されますし、指導をサービスと捉える事が増えてきています。部活動はもともと、位置づけは学校活動外なんです。そこで当社は、“部活動からスポーツに”という言葉を使っています。スポーツ=楽しむ、開放的、多様化です。決して部活動を否定するのではなくて、スポーツなのだからもっと民間に開放して、本来のスポーツの姿として広めて行きたいと志向しています。

種目は一つに絞らなくていい

もう一つ、プロスポーツチームとの連携事業も増えてきました。福岡では“我らが”と言ってよい存在のソフトバンクホークスさん。3年ぐらい前にお話しする機会があり、「プロ野球として野球人口が減少している問題を抱えている」というお話をうかがいました。

野球人口のすそ野を広げるため、元プロ選手が小中学生に野球教室を開いたりしますが、元プロ選手は上達のための技術指導は長けているけど、そもそもグローブのはめ方であるとかキャッチボールの仕方、“ゼロからイチのところを教える”のはどうしてよいか分からない。当社は当時全国で1万人ぐらいの野球スクール会員がいたので、ホークスさんと提携して野球人口増加のための仕事が出来ないかという話になりました。

現在、正式にホークスさんと提携し九州じゅうに共同スクール「ポルテ×福岡ソフトバンクホークスベースボールスクール」を広げていくよう活動しています。鹿児島~宮崎~熊本~と九州各地でホークスのユニフォームを着た子どもたちが野球をやる環境を作り出しています。

少子化でたいへんでしょう?と聞かれることも多いのですが、私たちは実はそう思っていません。野球界には「子どもたちを先にサッカーに持っていかれる」とおっしゃる方もいるのですが、これはサッカーは受け入れ先が多いからだと思っています。子どもが参加できる野球チームの方が少ないんです、各地域にひとつだけ、とか。

つまりサッカーと比べて環境が限られてしまっているわけで、これを増やしてあげれば…と思っています。

それともう一つ当社の考え方として、種目を一つに絞る必要はないと考えています。野球とサッカーを週1日ずつやっても良いし、バスケットと陸上をやっても良い。確かに少子化ですが1人の子が2種目以上やったら良いわけです(笑)子どもには豊かな可能性があって、どんな種目が楽しいか、やりたいかはいろんなものを経験した方が良い。学年がもっと上がっていったらいずれ自分で選んだら良いと思います。

これには副次的な効果もあって、あちらの種目に生徒を獲られたくない!と指導員たちがより良いサービス/選ばれる上質の指導を目指すようになるんです。この相乗効果で、各指導者たちの底上げになっていき、ゆくゆくは日本のスポーツの質向上に繋がるのではないかと感じています。

—スポーツスクール事業から出発したリーフラス。部活動支援・プロチーム連携事業と広がる事業展開のお話に、社会的課題をしっかり見据えていらっしゃる様子がわかります。そのリーフラスがeスポーツに注ぐ目線とは…続きは次回!


【井上一馬】Inoue Kazuma リーフラス株式会社 上席専務執行役員 ソーシャルアクション統括本部副本部長 西日本エリア統括兼九州支社長

リーフラス創業時はサッカースクール指導員として従事。その後、東京進出・関東圏拡大の責任者として活動。種目の増設を行い現在は10種目を実施。M&A後の組織改革や新事業開発などを手掛ける。プロバスケットボールチームの取締役兼GMとしてプロスポーツの経営・運営にも従事。その後、専門学校にてスポーツマネジメント学科の新設に取り組み、教務・営業も兼ねる。現在は部活動の改善・施設管理・スポーツ療育(障害児支援)・体育授業支援・健康増進・地域活性化など、「スポーツ・教育・健康・地域」をテーマに様々活動を行っている。e-sportsが上記テーマと融合することでそれぞれが発展する可能性を感じてFercに参加。

【リーフラス株式会社】https://leifras.co.jp/

2001年創業、本社東京都港区。資本金/1億2,500万円(資本準備金含む)スポーツスクール運営/スポーツイベントの実施/スポーツウェア・グッズの販売ほか様々な事業を手がける。福岡eスポーツリサーチコンソーシアム団体運営会員。

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